くらげに特別関心のないフツーの人は、真水にクラゲがいるとは思わないでしょう。実際、どこにもいる、というものではありません。まれな種類と言うわけではないのですが、出現が散発的で、新聞などのローカルニュースに登場することもあります。
この「まみずくらげ」、別名「まだみずくらげ」をミカワヤ氏のご厚意で間近に見ることができました。ミカワヤさんは自宅のカエル水槽(コンゴツメガエル:Hymenochirus boettgeri)でこのクラゲとポリプを見つけ、長く維持しています。
上の写真はまみずくらげの雌2匹。ミカワヤさんがポリプから大人の状態に育てたものです。大きさは直径9mm程度、4つ白く光っている丸い物は彼女らの生殖巣です。ここまで育てるのはいろいろ試行錯誤されたようですが、自然界では普通直径2cm程度にはなるようです。
これは赤ちゃんクラゲです。直径約1mm。ミカワヤさんちからの長旅(over 250km!)のせいで、この赤ちゃんは元気がありません。触手はなくなり(?)動きません。次の日にはこの小さいクラゲは瓶のなかで消えていました(カワイソー)。
ミカワヤさんはブラインシュリンプで育てたようですが、ほんとはワムシなどが赤ちゃんにはいいんじゃないか、とおっしゃってます(ブラインは塩抜きが必要です!)。
ご存じのように、クラゲの姿はくらげの生活史のうちの一部でしかありません。彼らはクラゲになる前、石などにくっついてポリプとして生活してるのです。左の写真は送っていただいた濾過用セラミック。これにまみずくらげポリプがくっついているのですが、私には肉眼で見えません。
「ポリプ」というとヒドラを思い出す方が多いと思うのですが、このポリプは全然それとは違います。サイズはもっとずっと小さいし、はっきりした触手もありません。
ところがどっこい、連中はまさにヒドラ同様の肉食動物なのです。刺胞によって獲物をとらえ、飲み込んでしまいます。次の3枚の写真はその過程を示しています。
まず、2つのポリプがくっついて群体になっているのにご注目。そして(1:左)ひとつのポリプがエサのブラインシュリンプを捕えます。1時間後、(2:中央)獲物はポリプにかなり飲み込まれています。12時間たった写真(3:右)では、二つのポリプが獲物を完全に共有しています。一つの群体のポリプは消化管がつながっているのがわかります(拡大図があります)。
自然界でポリプを採集するのは困難ですが、維持、繁殖させるのはそれほど困難ではないようです。
ポリプはやがて無性的に「フラスチュール」(frustule)を作ります。これはゆっくりですが、なんと動きます。右のアニメーションGIFファイルの撮影間隔は1時間です。
フラスチュールがこのように動くことで、ある場所でポリプが広がるのに役立っているらしいです。この件についての研究をされてる方もあるようです。
そのうちフラスチュールは物の表面に定着してポリプになります。左の図は皿のガラス上で新しくポリプになったやつです。
長さ約0.3mm。左上の「口」のまわりがなんかざらついた感じに見えます。これが触手で、周辺から刺胞を発射すると言われています。
条件がいいと新しいポリプは成長し、芽を出します。普通ひとつのコロニーは数個のポリプをつけています。
ある日、ポリプはクラゲになる特別の芽をつけます。温度変化によって起こるとも言われていますが、詳細は分かってないようです。
そして、クラゲは卵と精子で有性生殖をし…。(これはまた別のおはなし…)
まみずくらげをいただいたミカワヤさん、ならびにjfish-ML(クラゲメイリングリスト)の各位のお力添えとくらげ愛に感謝いたします。皆様とお会いしてなければこのページは書かれておりませぬ。
また、オランダのWim van Egmondさん、Micscapeの編集イギリスのDave Walkerさんの励ましにも感謝いたします。お二人のおかげでこのページの英語版が存在しております(99/11/13公開)。