まみずくらげ・クラゲの誕生

Last update: 2000/05/14
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a medusa bud in polyps

クラゲ芽を付けたポリプ群体。丸く光っているのがクラゲ芽。


クラゲという生き物はいつも「クラゲ」の形をしているのではありません。「ポリプ」という別の体があるのです。といってもピンとこないかもしれません。こういうことは人間や犬、猫など身近な動物ではあまりありませんから。でも生物の世界ではこういう「変な」ことが結構あるのです。

要はクラゲの卵が受精すると、まず「ポリプ」になって、そのポリプにクラゲ芽ができ、そこからクラゲが誕生する、というわけ。ということで以下ご覧ください。

今回、まみずくらげの赤ちゃんがお母さん?ポリプから生まれる様子を観察しました。なお、このポリプは人工的に交配して得た受精卵から育ったものです。

cited from Payne(1924) 実はマミズクラゲのクラゲ芽については有名な論文があります。

Payne, F. 1924. A study of the fresh-water medusa, Craspedacusta Ryderi. Journal of Morphology 38:397-430

というやつで、右の図はこれからの引用です(なお、学名は現在、C. sowerbyi とされています)。

まず、最初のころのクラゲ芽はこんな感じです(下の写真)。トップの写真のポリプとは別のものです。左の白い矢印がクラゲ芽、右の黄色い矢印はポリプの口です。なお、上方のオレンジ色の丸がアルテミアの卵、直径0.2mm程度になります。

この状態から4日くらいでクラゲが出ました。右の図でいうとno.15と16の間くらいになるかな?

a young bud

こういう芽が合計4つありました。大きさなどを比較すると、芽が出来た時期はそれぞれ微妙にずれてます(1、2日くらい)。また、この容器(9cm径のシャーレ)にはポリプ群体が10位しかないので、割合としては、結構できてます。ただ、現在他に維持してるポリプ容器では芽は見られてません。

何がクラゲ芽を誘導するのか、については決定的な要因は分かってないようです。ですが今回の経験から、冬から春・夏にかけての温度上昇、それに栄養状態かな?という印象を持ちました。

現在寒くもなく、暑くもなく、という陽気(室温25度まではいかない)ですが、確かに一時期暑い時期がありました。あれかな?



次に、上のPayneの図のno.18あたりからの様子を写真で示します(2000/05/12, 13)。

17:22 23:26 05:35 11:12
17:22 23:26 05:35 11:12

ほぼ6時間ごとの撮影です。縦方向に伸びていってます。触手もだんだんできてきて、一番右(11:12)ではなんとかわかるまでになってます。Payneの図と比べると、触手がはっきりするのは遅いです。

また、口の部分(基部から出っ張ってる)も大きくなり、芽の基部のオレンジ色の何物かが目立ってきます。

このあたりから時々ピクッっと動くようになりました。そして、新しい変化がはじまります(次の写真)。

13:33 13:58 14:08
13:33 13:58 14:08
14:12 14:32 15:12
14:12 14:32 15:12

まず、上の方から形が丸くなってきます。時間を見ていただければ分かるように、この辺の動き方は結構速いです。なかでも、14:08と14:12のあたりの変化は相当に速いです。

また、同時に触手がだんだん独立、というか、何かからはがれていく感じで立ってきます。芽の基部の赤い何物かがはがれていってるのも分かります。一体これが何なのかは分かりませんが。

Payneの図でいうと、23番が13:58、24番が15:12ってところでしょうか。そして、ホントに分離したのがほぼ16時でした。でも、なんだかあっけなかったです。拍動をしばらくしてるうちに基部のところにスキマができるような感じになって、ぽろっと外れていきました。

分離の瞬間のビデオクリップも撮ってあるので、そのうち出したいと思います(けど、いつになるかな?)。

この後は、「まみずくらげ・ベイビーズ」をご覧ください。


こういう次第で、一つだけですが、連続観察一応完了。しかし、卵割の時もそうだったけど、結構疲れました。最後のほうは眠くて大変。分離しそうで分離しないし。まぁでも、今回ちょうど週末でラッキーでした。

それにしても実際自分でやってみると先人は偉いなぁ、と思います(しみじみ)。Payne先生、きっといくつもケースを観察して論文書いたんでしょうね。今から76年前、大正時代か。この論文、実はまだきちんと読んでないので、これから勉強しなくては。

まみずくらげ:目次

撮影: 2000/05/09, 10, 12, 13