汽水産コケムシ(Victorella pavida ?)

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Last update: 2000/11/02
Colony of Victorella

触手冠の直径、約0.55mm


今回は汽水産といわれるコケムシです。汽水というのは、淡水と海水が混じった水のことです。ただし、わざわざそういうのをねらって採集に行ったのではなく、淡水のつもりが少し塩が入っていたらしい、というお話。

場所は東京の多摩川下流にある河川敷グラウンドの端にある池。下の写真の左手すぐが川になってるので、どこかでつながってるかも。海のにおいなどは全くしない場所ですが、考えてみれば河口から10km程度、塩が入っていてもおかしくはないですね。

pond debris

池の隅に浮かんでいる、上右のようなゴミを少しすくってきて、実体顕微鏡で覗いていて見つけました。枯れ枝みたいな植物のかけらに群体が付着。 まず気づいたのが、いやに触手が少ないこと。

この時点では汽水という事は全く頭になし。ただ、撮影の時に水道水につけるとどうも触手をのばさず、取ってきた水だと大丈夫なので変だなぁとは思っていました。

V. pavida

ともかく前に見たものとは違うので、資料を調べたところ、出てきたのが Victorella pavida チャミドロモドキ というもの。 以下、日本淡水生物学の検索表の附記(鳥海衷 p.287)より引用します。

以上のほかに海岸に近い淡水域にはチャミドロモドキ Victorella pavida Kent がほかの淡水苔虫と混棲することがある.しかしこれは本来汽水性のものである.チャミドロモドキ科 Victorellaidae に属し,チャミドロコケムシに似ているが襟を持ち,触手は8本なので容易に区別がつく.

これを見て、「えっ、汽水?」と思ったのですが、確かに触手は8本だし、ほかの淡水苔虫と混棲、というのもその通りなのです(参照→ 「外肛動物」)。そこで水を数滴、皿の上で乾燥させると塩分らしき結晶が! 水道水で触手を閉じてしまった訳もコレだったのか!

これが実際どの位の濃度なのかはサボッていて調べてないのですが、かなり薄い感じです。鳥海(1944)によると、松島湾の0.006%の汽水中からも記録されています。いずれにしろ上の池の塩分濃度はもっとデータを取る必要がありますね。

ということで、一応いまのところ、素人的にはチャミドロモドキでいいと思っているのですが、この連中(Ctenostomata)のホントの分類は難しいので有名なようです。今回は群体の分岐の仕方など全然観察できてませんし、まぁ、再会できたら… ^^;



なお、このコケムシはほとんどの淡水コケムシ(掩口類)とは別のグループの裸口類に属します。触手の配列なども、掩口類が基本的に馬蹄形(U字型)なのに対して、円形になっています。

海のコケムシはみな裸口類、やっぱり血筋が塩を求めてるのでしょうか ^^; なんて言いたくなりますが、この仲間(裸口類の中の櫛口目 Ctenostomata)にも、ほぼ完全な淡水で生活するものが少数ながらいるそうです。


撮影: 2000/08/14, 15, 22, 27 公開: 2000/11/02