Last update: 1999/10/23
マルサヤワムシ科Flosculariidae、シナンテリナ属の一種 Sinantherina sp.
多摩川で取ってきた材料の中にコケムシをさがしていて、みつけました。落ち葉の切れはし(浮いている)にくっついてます。肉眼で見ると、こないだのコケムシの群体にちょっと似ています。
ファーブルでのぞいてみたら、ありゃりゃこれは何だ? とびっくり。どうもワムシのようです。ワムシというとヒルガタワムシのイメージしかなかったので、少し悩みました。体をゆらゆら揺らせますが、縮むことはありません。「顔」の直径0.3mm程度。上の写真を見ると、「顔」のまわりがわずかにギザギザしていますが、これが繊毛のようです。
日本淡水生物学(p.293)によると、この類で群体を作ってるのは成長した♀だそうです。
また、「葉弁状突起」が2, 4, 8個あるものがそれぞれ、Limnias, Floscularia, Octotrochaの各属になるそうです。が、これが何を意味するのか不明。頭のでっぱりの数ではない模様。
上の写真では体の中に茶色いものが見えてますが、1日おいて撮った右の写真には見えません。消化しちゃったのか?
うごくので撮影しにくいです。新兵器QV-8000SX+ベローズ+顕微鏡用4Xレンズ+外部ストロボ。リモコンもストロボも使えないE900では難しいですね。上の大きい写真は、最大倍率で撮ったやつを半分にトリミングしてます。
1999/09/19
図書館で少し調べてみました。マルサヤワムシ科Flosculariidaeは、日本淡水動物プランクトン検索図説(東海大学出版会 1991)には5属8種が載せられています(pp.298-301)。これには日本淡水プランクトン図鑑(保育社)にある3属4種(PL12, 9-13)がすべて含まれています。
図を見ると、頭(「頭冠」というようです)の形がハート形なのは、SinantherinaとLacinulariaというふたつの属で、3種がのっています。
このうち、S. spinosa というのは、胴にトゲがあるとのことで、違うようです。S. socialis は頭冠の下の部分「頚」に「4個の明瞭な円球状の疣がある」とのこと。一番上の写真でハートの基部が白く光っていますが、これがそのイボ?そういえば4個みたいだし…。分布は琵琶湖で、世界的に広く分布するが、出現頻度は低い、とのこと。これがイボでないなら、ハナフサワムシになると思いますが、一応Sinantherina socialis じゃないかな、ということにしておきます。真相はいかに?
なお、群体を作るワムシは極めて少ないとのことで、「動物系統分類学」(4: 袋形動物 p.17)にはこのマルサヤワムシ科(Flosculariidae)とテマリワムシ科(Conochilidae)だけがあげられています。
1999/10/23
上の東海大学の本の記事を書かれた鈴木實先生におたずねしたところ、
写真で見る限り、Sinantherina属と思われるが、種の特徴まではわからない。例えば、消化にかかわる腺が何対あるか(!)など。従ってSinantherina sp. とするのが適当である。この属には5から6種が知られている。
という趣旨のお返事をいただきました。なるほど。属は当たっていたか、ということで嬉しい!
ついでに情報ですが、鈴木先生はワムシの原図を豊富に収録した専門書「車輪虫類同定学」を出版されています。限定出版とのことです。興味ある方はご連絡ください。
「ワムシ」という名前もいろいろあるようですね。例えば「マムシ」と間違われるとか (!)鈴木先生は「輪毛動物」とか「車輪虫類」というようにされているそうです(というような話もこの本にのっています)。
撮影: (d) 1999/09/13, 15