アゲハモドキ: Epicopeia hainesii" (東京都八王子市)
こういう虫がいることは前から聞いていましたが、実際に見たのは初めて。ちょっと嬉しい。
ご覧のように、一見するとまったくのチョウチョ、 行動にしても、昼間に花の蜜を吸っています。 でも、このアゲハモドキ、チョウではなくて「ガ」、とされています。
下右の拡大図をご覧ください。触角がくし状になっています。 「頭かくして尻隠さず」じゃなかった、「画竜点睛を欠く」でしょうか、 これでは「チョウ」という訳にはいかない!ということのようです (チョウの触角は、先が太くなったこん棒状、が普通)。
なお、チョウとガ、という区別については、いろいろな話があります。 本質的な違いはない、のだけれど、実際に言葉が2つある、 というのがややこしい原因のようです(参考:Wikipediaの記事)。
それにしても似ています。(かなり小さいのと触角の件で、違うのはすぐに分かりましたけど)。 なかでも、ジャコウアゲハの♀に似ているといわれています。 翅が透けた感じや、特徴的なおなかの赤色がそっくり、飛び方も…とのこと (実は私、本家の方をよく知らないのですが)。
ジャコウアゲハというのは、幼虫時代に食べる植物(ウマノスズクサ類)のせいで、体に一種の毒を持っていて、鳥などの捕食者にとって「不味い」虫なんだそうです。 それで、このアゲハモドキは、自分の姿がそのジャコウアゲハに似ていることで、 捕食者に警戒され、生き残りに有利に働いてる、という話がされています。 いわゆる「ベーツ型の擬態」ってやつです。
まあ、「擬態」については他にも様々のものがあり、またいろいろ難しい話もあって、 きちんと解説するのは、ちょっと私の手には余ります。 とりあえず、今回のは目立つやつ(「標識的擬態」あるいは「狭義の擬態」)。 一方、シャクトリムシが枝に似てる、など、目立たないのもあって、これは「隠蔽的擬態」。 これは英語だと、 "mimicry" じゃなくて、 "mimesis" を使うらしい、 …というあたりでお茶を濁しておきます。
以前に書いた、スズメガの幼虫の件も「目立つ」擬態のほうですね。よかったらご覧ください。
さて、この種は、決して珍しいものではないが、あまり見ない、とされているようです。 もっとも、webを検索すると沢山出てきます。いわゆる「普通種」っていうやつ。 「ガ」らしく、夜の灯にも飛んでくるらしいです(夜の蝶!)。
今回の写真、少々(かなり)ボケているのですが、吸蜜しているらしい場面が写っているのがポイント(触角の写真に、伸ばした口も写っているのにご注目)。花はヤマノイモ科のオニドコロかと思います(ちょっと不確実)。
参考:アゲハモドキ 控えめな模倣者
http://www.geocities.co.jp/Athlete/4456/sub-2_ins_agahamodoki.htm
各種昆虫にからんだエッセイを大量に載せてるサイトの一ページ。ほんの少ししか見てませんが、すごいなぁ、よくこんなに書けるな、と感心します。内容も一ひねりがあって読ませます。昆虫以外の文章もあります(筆者不詳。「杜氏」氏?)。
おまけ:「画竜点睛」、正しくは「がりょうてんせい」と読むんですね。知りませんでした!