おなじみアオミドロの写真です。でも、ちょっと細工がありまして、茶色いツブツブが見えますね。これが「ピレノイド: pyrenoid 」という代物です。普通はこんなふうには見えません。
アオミドロはらせん状の葉緑体を持っていて、下左の図のように細胞全体が緑色に見えることが多いです。ピレノイドは見えますが、やはり緑色。下右の図はちょっと「ほどけた」感じのもので、これを見ると葉緑体が「らせん状」なのが良く分かると思います。こっちは「接合子」でご紹介した個体ですが、ピレノイドはイマイチわかりません。
なお、この2つのアオミドロ、種類が違うのかもしれません。今まで気にしてなかったのですが、螺旋の巻く方向が違います。ピントの合わせ方(細胞の表面か底面か)でも違って見えるので確実ではないですが、どうも違うようです。葉緑体の巻き方が種類で違うのか環境条件で変わるのか、そのへん調べてみたのですがちょっと不明。ただ、画像検索をしてみると、上左の図の巻き方(左巻き:left-handed :S巻き)が大変多いようです。
参考:「右巻き・左巻き」というのは非常にわかりにくいですね。用語も混乱しているようです。Wikipedia の記事が、この件では大変参考になります。ご一読をすすめます。
さて、お話は「ピレノイド」です。冒頭の「細工」、なにをしたかというと、ヨウ素液(実際はヨーチン)を使ったのです。
よく、デンプン粒の観察というのをやりますね。ジャガイモなんかで。葉にある葉緑体が光合成をしてデンプンを作る(同化デンプン)。それが糖になって緯管束を通り地下のイモ(塊茎)に運ばれ、そこの細胞中のアミロプラストで再びデンプンになって貯蔵される(貯蔵デンプン)。ヨウ素液を使うと、これが染まって見える、というやつです。
ところが、ご覧のようにこのアオミドロでは、葉緑体の一部であるピレノイドだけが染まっています。他の部分は染まっていません。ピレノイドにデンプンが集中しているわけです。ちなみに、ピレノイドがあるのは、緑藻・珪藻・接合藻・褐藻・紅藻にわたる多くの藻類とある種のコケ植物(ツノゴケなど) とのことです(岩波生物学辞典第4版)。
ピレノイドには、カルビン−ベンソン回路で二酸化炭素を固定する最初のところで働いてる、Rubisco と呼ばれる酵素(リブロース-1,5-二燐酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)が局在しているそうです。高校の生物では、「カルビン−ベンソン回路は、葉緑体のストロマの部分、覚えておいてね!」なんてよくやります。でも、このアオミドロなどでは、単にストロマというのではなくて、ピレノイドに集中してる、ということのようですね。ふーむ。
ヨウ素液で染めてみたのは、生物学辞典の記述を見て試してみた、ということなのですが、生徒実験でやると面白いかも。操作は簡単ですし、光合成のしくみの話にも持っていけるし…やったことありませんけど。なーんて、何だかセンセイみたいでイケマセンね。以下、メモです。
電顕でみると、細胞中ほとんどアミロプラスト、って感じですね。「低真空走査電顕」っていうのも面白い。金属コートなし、乾燥なしでもいけるとか。すごいな。更に、家庭でも使えそうなやつが500万円位で出てるんですね。うーむむむ(無理)。