丸い緑の玉が「接合子」
一見似ている藻も多いのですが、これはホンモノのアオミドロ。大きな特徴が、ここに示したように2つの細胞が「接合」つまり合体して「接合子」を作るということです。写真の丸いやつですね。ちなみに合体する細胞を「配偶子」といいますが、この場合は体の細胞がそのまま接合するので「体細胞接合」などといいます。これをするグループを接合藻類といって、ミカヅキモなど単細胞のものもあります。
右の写真は接合の途中。アオミドロは細胞が分裂をくりかえして糸状の体を作っていますが、まず、この糸状の2本(2個体)が並びます。そして並んだ細胞の間に管(接合管)ができ、ここを通って細胞質が移動して合体。そして一つの細胞になるわけです。これが「接合子」。
上の写真では上側の個体だけに接合子ができていますので、これがメス。下側のカラになったほうがオスになります。右の写真では細胞ごとに雌雄が違う?とも見えますが、横につながった細胞は中身が同じはずなので、結局上の写真と同じようになるんだと思います(少し自信なし)。
さて、こうしてできた「接合子」が発芽して次の世代(子供)になるのですが、もともと2つの細胞が合体したものですから、中身(遺伝子)が2倍になっています。つまり子供の細胞は親の細胞の2倍の中身(遺伝子)を持っている、ということでこれは困る。
で、どうするかとういと、接合子が特別な細胞分裂をして中身をもとの量に戻します(半分にします)。この分裂が「減数分裂」です。
動物でも、卵と精子が接合(受精)して中身が2倍の細胞ができるわけですが、こちらは接合(受精)の後ではなく、その前(卵と精子ができるとき)にすでに減数分裂をして中身を半分にしているのでOK、というわけ。
…というようなことは学校でも教えているわけですが(でもあまりやらないか)、ふと気づきました。減数分裂では、1個の細胞から4個の(中身が半分の)細胞ができるのが基本です。接合子が減数分裂するときはどうなってるのか?
「はじめは4つの核ができるけど1つだけ残して後は消えるんじゃない?卵形成なんかと同じで…」、と思って調べてみたら、一応正解でした。でもですね、いろいろあるんですね、このあたり。とてもよくまとまった表があったので、引用します。原典には図も入っているのですが、スキャンして掲載というのもちょっと気がひけたので、ポイントだけまとめたのをごらんください。
分類群 | (接合) 個体 → 配偶子 → 接合子 | (減数分裂) 接合子 → 新個体 |
メソテニア科・ゴナトチガ科 | 2 → 2 → 1 2 → 4 → 2 | 1 → 4 |
ヒザオリ科・ホシミドロ科 | 2 → 2 → 1 | 1 → 1 |
ツヅミモ科・ヒアロテーカ科・ミカヅキモ科 | 2 → 2 → 1 2 → 4 → 2 | 1 → 1 1 → 2 1 → 4 |
広瀬弘幸 1975. 藻類学総説. 改訂第2版 p.494 第223図 接合藻目の接合子のできる数と発芽の際の新個体数 を改変
アオミドロはホシミドロ科に属しますが、1個の接合子が減数分裂をして4個の核を作るものの、3つは発芽の前に消えて1個の核だけになる、ということですね。でも単細胞のものなどでは、1つの接合子から4個の新個体ができるとか、核が2個消えて2個体になるとかいうのもあるわけです。 それから、細胞が接合の前に分裂して2つの配偶子ができるというのもある、というわけです。
今まで気にしてなかったけど、あーなるほどそうなのか、という感じでした。考えてみれば、「生殖」といいながら、2個体から1個体に減るわけです、アオミドロは。それでも遺伝子混ぜて新しいのを作ることに価値がある、ということなんでしょう。が、せめて2個体から2個体、2個体から4個体とかが可能ならそれにこしたことはないわけで、実際そういうのもいろいろいる、と。
このページ、随分前から用意してた物件でしたが、ようやっと公開できました。 ちなみに、アオミドロの接合、その後出会っていません。発芽も見てないし。材料どこで取ったのかも記憶なしですが、また探してみようかな。