ネンジュモ: Nostoc

Home
Last update: 2008/04/13
Nostoc commune

Nostoc の小さなコロニー(多分)


観察のたびに知らないものが出てきます。今回のブツはこの藻類。透明な袋に入ったようなところがポイント。色をみるとランソウらしい。ランソウのランは藍色(あいいろ)の藍。外側にある緑色の細胞と比べると、ちょっと青みが濃いのが分かると思います。

なお、藍藻は「シアノバクテリア=藍色細菌」ということの方が多いかもしれません。細胞の核が核膜でかこまれていない「原核細胞」で体ができているのは、他にはバクテリア=細菌だけ、他の藻類とは全然違う、だから藻類なんて言っちゃいけない!というわけです。でも、「藻」という字は生活の仕方から来てるんで、話がちょっと違うんではないでしょうか…ということで、ここではあえて「藍藻」でいきます。

さて、それでこいつは何?となったのですが、どうも「ネンジュモ」Nostoc の小さなコロニーのようです。同じような図が川村淡水生物学に出ていました(p.19, 図2-4の64)。「…(略)…粘質の袋でつつまれた一定形の塊をなす」というのがこの属 Nostoc の特徴のひとつであるようです。中の細胞が寒天状の物質を作り、細胞がその中に埋まっている状態なのでしょう。Webでも同じような画像がみつかります。

中の細胞が増えていくと、この寒天状の物質もふえていきます。上の写真でも、右側のものはひょうたんみたいな形になってますが、これがどんどん行くと、やがて肉眼でも見えるようになったりするわけです。例えば、イシクラゲ。次のリンクをどうぞ。


dried Nostoc on a staircase dried Nostoc

実は、お仕事関係でイシクラゲは既に見てたのです。「原核細胞の観察例」として、教科書に出てるんです。それで探したら右図のような感じで校内にありました。

いかにもありがちな光景ですが、隅の緑色はコケですね(関係ないけど、こういうコケがクマムシ観察に好適!)。その手前のコンクリートに薄く張り付いてる紙状のやつです。これが乾燥したイシクラゲ。ちょっと海苔のようです。

これを少量スライドガラスにとり、水を数滴落とし、しばらくしてから針とピンセットでほぐす感じでプレパラートを作って検鏡したのが下の写真です。


Ishikurage

ちぎれた端のところを見ています。右上半分に沢山の細胞が寒天状物質の中に埋まっているのが見えます。一部の細胞は寒天質物質と一緒にちぎれずに残り、裸の状態で左下へ飛び出しているのも分かります。

動物で言うと、「軟骨」などはこれと似た構造ですね。「軟骨」は、軟骨細胞が大量の物質(コラーゲンなど)を分泌し、そのなかに軟骨細胞がポツポツあるような組織です。生物の体は細胞でできているのはその通りですが、細胞だけでなく細胞が作るもの(細胞間物質)も大事です。

でもこれ実習用に便利そう。乾燥状態で保存しておけば、チョイチョイとできますから…(あまり量がとれなかったので、まだやってませんけど)。また、乾燥していても死んでいるわけではないという話も聞きます。

最後にオマケをひとつ。右のやつ、なんだか似てません?(細かいとこはいろいろ違いますけど、見るたび思い出す私)…地下鉄のディスプレイです… mouse on !

display on a subway station

撮影: 2007/10/10, 2008/03/27, 04/07, 10 公開: 2008/04/13