水面に花粉を散らして浮かぶ花
カナダモをご存知ですか? 手に入りやすいので、学校の理科の教材とか、金魚の水槽に入れるとかによく使われます。特に「オオカナダモ」というのが有名ですが、今回のは「コカナダモ」。もともとはどちらも日本にいなかった移入種(帰化植物)です。実験用に入ってきたのが逃げ出して全国に広まった、といわれています(オオカナダモのかつての学名が Elodea canadensis ので、カナダモ…?)。
オオカナダモ: Egeria densa
「オオ」と「コ」は主に葉の大きさが違うことから名がついたと考えられますが、花もかなり違います。ご覧の通り、オオカナダモの花は「普通の」花です。それに比べると、一番上の写真を見て「どこが花なんだ?」とお思いの方も多いでしょう。そこで、次の写真をどうぞ。
コカナダモ: Elodea nuttallii
左2枚はつぼみとその拡大で、右2枚が開いた花のアップ(横と下から)です。オオカナダモの花と比べると、花びらがないものの、3枚のがく片がそり返る様子がよく似ています。ただ、オオカナダモの場合、茎から柄をのばして水上で開花するのですが、コカナダモでは、花が切り離されて水中を浮上し、水面で開くのです。 (オオカナダモは Egeria 、コカナダモは Elodea と別属になっているのもこの辺のことからかもしれません。なお、コカナダモによく似た日本に在来のクロモも花を切り離すタイプですが、また別の属 Hydrilla にするようです。)
トップの写真はそうして開いた花が花粉を散らしたところ、というわけです。これをもう少しアップで横から見ると次のようになります。ちょっと分かりにくいので、写真にカーソルをのせると色がつくようにしました。赤色ががく片、緑色のところが花粉がはいっていた袋(葯)の部分です。3枚のがく片で水面に浮かんでいます。
実は、これと同じようなことをする有名な植物があります。西表島のウミショウブ Enhalus acoroides です。同じトチカガミ科なので当然といえば当然ですが、大変よく似ています。NHKの番組で何回かとりあげられたので、ご存知の方もいると思います。私は、ビデオでウミショウブのことを知って、「あっ、これ同じじゃないの!」とびっくりしたというわけです(T様、その節はありがとうございました)。
幸い、NHKに紹介ページがあるのでどうぞご覧下さい。「背丈3ミリ!海を走る花」ということで、花のアップの写真もあります。ただしこちらは、花粉を散らすというより、雄花自体が動いて雌花のところへ行く、という感じです。でも、コカナダモの花も水面を滑っていくのは同じ。西表の海と、小さなコンクリート池で全然スケールは違いますが、でも、なんだか感動しました。
なお、コカナダモ(オオカナダモもそうですが)は、日本には雄株だけしか入ってないとのことです。雌花はどんなのか、受粉はウミショウブみたいにやるのか?また、この植物は再生力が大変強いので、有性生殖がどの程度重要なのか?など、いろいろ面白そうなのですが、ちょっと検索した限りではその種の情報はでてきませんでした。もう少しちゃんと調べてみればいいんですけど。
それから、最後にご注意をひとつ。コカナダモもオオカナダモも、ちょっとした植物体の切れ端から大繁殖してしまうので、注意が必要です。実際いろいろなところで問題になっており、「特定外来生物」に指定すべきであるという報告もありますので、くれぐれもお気をつけください。葉っぱ一枚でも危ないようです。