しましま で クルクル!
今年の春先、三浦半島某所の小さな潮だまりから、地味な藻をひとつまみ拾ってきました。色こそ違うものの、ごく細い糸状で、「アオミドロ」みたいな感じのやつです。これを実体顕微鏡でのぞいて、びっくり。
上の写真だけだと「クルクル」と言っている意味が分からないかもしれませんが、 横から見ると、末端がクルクルと曲がっているのが分かると思います(右図)。 一般的には、鈎状に曲がる、というようですね。
なお、右の写真で色が違うのは光の当て方によるもので、同じものを撮影しています。
藻の塊をぱっと覗くと下左のような感じになります。体の太さは約60um(0.06mm)。普通、髪の毛の太さは(個人差もありますが)100um程度ですから、ちょっと細めの髪の毛がからんだゴミ、みたいのなイメージになります。
これは何だ? それにページにしなくちゃ、と気になりながらモロモロに追われて放置、半分忘れていたのですが、ありがたや夏休み。ようやくお披露目となりました。
結論は、表題にあるように、「ケイギス」という紅藻植物であろう、ということです。
「ケイギス」って妙な単語ですが、「ケ・イギス」です。 でも、そもそも「イギス」って何? という方はこちらをどうぞ。
このイギス、広辞苑によると「海髪」と書くそうなので、「毛海髪」というのは、イギスの中でも小さなやつ、といったニュアンスでしょうか?それとも、一番上の写真でも分かりますが、毛が生えてるってこと? なお、本家のイギスは、しましまでもクルクルでもないらしいです。
資料探しも十分やってないので(特に種レベルでは)怪しいのですが、まぁ大きく外してはいないだろう、ということで、とりあえずWeb にあったものを2つほど。
上に引いた Univ. Guam のページには 「しましま」について、"they appear distinctively banded because the axes are corticated only at the nodes (junctions between the large axial cells)" とあって、種の分類はこの部分の特徴が大事、だそうです。
考えてみると、この体のつくり、例のカワモヅクと共通するものがありますね。 大きな中軸細胞が一列にならんで、その一部から外側に小さな細胞が切り出されて…というわけですから。
また、同じページに、"Some have pincerlike tips (technically = forcipate)" ともあります。これ、「クルクル」が2つ、先端ではさみ (pincers / forceps) みたいになってる状態を指しているのでしょう。ただし、 Ceramium すべてにある特徴ではないし、この属以外でもこういうのはある、とのことです。
おまけ: (ケイギスでなくて)イギスの料理
イギスは、「北の海藻図鑑」には寒天の原料とするとあり、広辞苑では「乾燥漂白して糊の材料にする」とあります。また地方によっては別の食べ方もするようです。結構ひっかかったので、以下にメモ。
長崎のページで、島原半島では「イギリス」と呼ばれており というのにちょっと笑ってしまいました。