淡水産の紅藻というと「えっ」っという感じかもしれません。でも、世界で200種位は知られているそうで、このサイトでも、熱帯魚の水槽に出たものを以前に2つほどご紹介しています。
しかし、今回ご紹介するカワモヅク(カワモズク)は、 「秋から翌年の春にかけて、山地や平地できれいな水の流れる小川や泉にはどこでもあらわれる」 と文献(森 1976)にあるものの、水槽に出たというのはあまり報告されてないのでは、と思います。
しかも、この写真は5月撮影。 上の写真のように、水草 (Microsorum) にぶら下がってついていました。
はがすとこんな感じ。目盛は5mm方眼です。右の写真では節があるように見えますが、実際は節ではありません。
このカワモヅクに特徴的な体のつくりは、さらに拡大するとはっきりわかります(次図)。
上の写真でいうと、まず、比較的大型の細胞が横に一列につながって中軸を作っています。その中軸細胞の端から、小型の細胞が並んだ枝(短条枝)が束になって出るので、こういうふうに見えるとのこと。
ということは、中軸細胞というのは(直接見えませんが)巨大なんですね。この画面の横幅が0.7mm程度で、その間に4個ほどあることになります。枝の細胞とは大きさが極端に違う…ふーむ。
さて、もうひとつ面白いのは、水槽でよく出る「黒髭藻」はカワモズクの生活史の一段階である可能性がある、という話です。(イモムシとチョウチョの関係、というのとはいろいろと違いますが、まぁ、とりあえずそんなイメージで考えていただいても、可。)
以前にこの話を伺っていたので(「水槽の黒髭藻(紅藻)」参照)、実をいうと「やっぱり出たか」みたいな感じではありました(ただし、同じ水槽ではありません)。
普通に見ると緑っぽい感じが強いですが、バックを黒くして落射照明をすると「紅藻」であることを納得できます。
写真では、短条枝の先端から細い糸のような構造が出ているのが目立ちます。文献にはあまり見ませんが、何なのでしょう?
種類についても、なんとも分かりません。 実は、一年以上前に撮影してそのままになっていた物件で、水槽の環境もかなり変わり、消えてしまった模様です。
乾燥標本だけは残ってますが、何かの役に立つかな?
参考資料: 森 通保 1976. カワモズクの体の構造とその生育環境. 遺伝 30(12): 72-76.
たぶん参考にならない雑記:
髭 (し) は口ひげ(mustache/moustache),鬚 (しゅ) はあごひげ(beard),髯 (ぜん) はほおひげ(whiskers)をいう。 (平凡社・マイペディアより引用)
ふむー、そうだったんですか…ちょっとびっくり。黒鬚藻っていうほうがイメージ合うかな?