枝分かれにご注目。細胞もわかります。
東京の多摩川下流にある池で「藻」を拾いました。
池の中に立っている棒に引っかかって、ゆるい流れにたなびいていたので、「どうせよくある『アオミドロ』の類(糸状の藻)だろう」、とその時は思っていました。 でも、この手のゴミにはいろんな微小生物がくっついてることがあるので、それを目当てに持ち帰ってみたのです。
ところが、帰ってよく見たら、びっくり。アオミドロとは全然違う!バットに水を張って広げてみるとこんな感じ(右図)。
まず、枝分かれが沢山あります(一番上の写真はアップにしたところ)。「幹」というか、太いところが幅5mm程度、細い「枝」は1mm以下です。
それから、体の中に気泡が入っているのでも分かりますが、切ってみると、中空になっているのが確認できます。
えーっ、こんな淡水藻あるの?!
とびっくりしたのですが、…ん、そうだ、ここはフジツボも住んでいる汽水池だからなー、と気がつきました。そこで、その昔古本屋で買った海藻の図鑑を取り出して調べてみたところ、「青海苔」が河口近くに多産、という記述を発見。絵もそれらしい!
しかし「青海苔」って、ヤキソバにかけたりするアレですが、全然気にしたことなかったなぁ…。港などでよく見る、緑色のひらひらした「アオサ」という藻、あれに近いやつだろ、程度の認識。知らなかったのですが、四万十川などの特産品なんだそうですね。調べたら、山口県粟野川での生産の様子が出ているページがあったので、リンクしておきます (Fuji's World)。
なお、「川海苔」はまた別(カワノリ属: Prasiola ) で、完全に淡水産です。ややこし。
ただ、このグループは「アオサ・アオノリ類」という言い方もされていて、なかなか難しいグループのようです。最近の分子データによるといろいろ問題はあるようですが、一応、「アオサ」は細胞が2層になった葉状体なのに対し、「アオノリ」は細胞1層の中空構造ということで区別されているようです。
せっかくなので、カミソリで切ってみました。やはり1層になってるようです。しかし、こういうのをちゃんと切るのは大変ですね。汚い写真ですが、ご勘弁を…
ついでに細胞の様子もお目にかけます。全体に緑に見えますが、中にある丸い粒が葉緑体のようです。
種類が何か、という話も気になるのですが、このへんはまぁ、今のところ資料もほとんど当たってないので、Enteromorpha sp. (アオノリ属の一種)ということで、保留にしておきます。スジアオノリというのが最もポピュラー、のようですが。
以下、参考リンクです。
なお、上記の「北の海藻図鑑」は、「北海道周辺で極々普通に観察される海藻類について主に生の状態での写真、組織などの顕微鏡写真、それらの見分け方のポイント、さらに北海道における分布、生態などについても簡単に述べます」、というサイトです。個人で作られているようですが、標本写真も美しく、大変参考になります。すばらしい!