妙なタマネギ状物体。直径0.1mm弱。 動きは特になし。
例によってゴミの中に発見。もう少し詳しく状況を説明すると、ハコベの花を水にさしておいたのを忘れてたのです。花が終わったのが水中に沈んでいて、その表面に茶色の点々。結構たくさんありました(右図)。
上の画像では「口」のところから細長く白っぽいひもみたいなのが出てるように見えますが、これはナゾ。その後、確認できてません。
ハコベの毛も確かに沢山あるのですが、それは細胞がはっきり見えるので違います。それに相当細長い。何物?
タマネギを拡大するとこんな感じです。網の目のような模様が見えますが、有殻アメーバの一部にこのような連中がいるようです。でも詳細不明、全然違うかも。→やはり全然違いました!
「口」が2つあるのもありました。
どろおいみじんこさん のご意見で、菌類の専門家にお尋ねしたところ、「おそらく分生子果不完全菌類に属するPhoma属菌ではないか」とのお返事をいただきました。お答えいただいた安藤先生、今回もありがとうございました。
私は「ツボカビ」という名前が気になってお尋ねしたのですが、確かに外形は似ているとのことですが、
などの点で、ツボカビでなくPhoma属菌と判断されたとのことです。なお、「五つの王国」などの五界説によれば、「ツボカビ」類は原生生物界に入れられています(不完全菌類は菌界)。この辺の話の解説は今回は省略します(???という方、申し訳なし)。(→2000/09/01 追記)
とりあえず、この写真は普通のカビの仲間であることをご理解ください。
でも、もう少し補足しますと、まず、有性生殖をしない(または知られていない)菌類をまとめて「不完全菌類」といいます。以前ページにしたAlternaria も同じく不完全菌類ですが、あちらは「糸状不完全菌類」。今回の Phoma は「分生子果不完全菌類」。このように二大別するそうです。
分生子果というのは、そこに分生子(減数分裂しないでできる胞子のひとつ)をつくる、 「分生子殻とよばれる類球状の器や分生子層とよばれる皿状の器」のことで、菌糸が密に集合してできるそうです。つまり、この「タマネギ」の正体は「分生子殻」だったわけです。これは子嚢菌類の子嚢殻(ここには子嚢胞子ができる)に似ているとのこと。
そして、「タマネギ」の口から出てるヒモのようなもの、これは分生子(胞子)のかたまり! 粘性胞子(slime spore)であることが多いそうで、それでヒモ状にみえたのでしょう。そしていざ確認しようと思うと、バラバラになっちゃってダメだった…。うーん、思わず納得してしまう。
Phoma(フォマ)属は、植物の葉や茎などを侵して斑点性あるいは茎枯れや枝枯れ性の病気を起こす代表だそうです。その他、タケの天狗巣病をおこす属とか、仲間にはいろんなのがいるようです。
この項は、キノコの世界・菌界5(週刊朝日百科「植物の世界」別冊)pp.133-137、岩波生物学辞典(4版)なども参考にしました。いやー、勉強しちゃった ^^;
筑波大学生物科学系 植物系統分類学研究室に五界説のページあり(井上先生)。 (http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/etc/5kingdoms.html)
大きな分類の考え方の解説が読めます。八界説ほかもあり。