Last update: 2004/12/19
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カバーグラスの周囲を何らかの材料でふさぎ、封入に使った液の蒸発を防ぐ方法。水溶性の封入剤を使用する際も、多くの場合はシールをした方が長く保存できる。単なる水で封入した場合は、シールしても長期保存は困難。
スパーテル(金属の薄いへら)を加熱してワセリンのかたまりに触れると、ワセリンが溶け、スパーテルに付く。固まる前にカバーグラスの周りをぐるりとなぞってシールする。押しつぶし法による植物の染色体標本を作った時、とりあえずこの処理をして乾燥を防ぐ(後日カバーを外し、永久プレパラートにする)。
前項に同じだが、経験なし。ワセリンは固まっても柔らかいが、パラフィンは固いのではがれ易いかもしれない。
包埋に使ったパラフィン屑をスパーテルにのせて焔で温め、まず覆ガラスの四隅に滴らして動かぬようにしてから、残りの縁にも同じように隙き間なく塗り付けるのである。[10]
ワセリン、ラノリン、パラフィンを2:2:1の割合にまぜ、蒸発皿などでとろ火でゆっくり煮る。[34]
化粧品のマニキュア。1回塗っただけでは不十分で、失敗した事が多い。
菌類の研究者の間で、固まらない封入剤で封入したプレパラートを扱いやすくする方法として、マニキュアで周囲を固めるという方法が使われています。方法は簡単。まず、プレパラートを作ります。学芸員1号さんの方法でいけば、水飴が固まるまで放置しておくとよいでしょう。十分固まってから(その間埃がかぶらないように!)、はみ出した水飴を濡らしたティッシュペーパーやペーパータオルで丁寧に拭います。それから、透明にマニキュアでカバーガラスの周囲とスライドグラスの間を塗り固めてやるのです。何度か透明マニキュアを塗り重ねたら、赤いマニキュアを塗り重ねて、さらに木工用ボンドのような酢酸ビニル系エマルジョン接着剤をマニキュアの表面に塗り、もろいマニキュア皮膜を保護して出来上がりです。[22]
マニキュアはお手軽気軽ですが,被膜が弱すぎる嫌いがあります。エポキシ系の糊(あるいはエポキシ系の塗料:船底塗料など)なら安心です。ただし,それにしても,糊を付ける面のガラスが清浄であることが絶対条件です。これはマニキュアでも同じです。[21]
パラフィンとカナダバルサムを等量とり、蒸発皿の中でとろ火で鉛色になるまで煮る:牧野佐二郎による[1]
昆虫、菌類などの分野では古くからよく使われているらしい。後述の樹脂による封入に比べ手軽に処理できる。また、一部の色素は、アルコール・キシロール等による脱水を行うと退色してしまうため、樹脂による封入ができない場合がある。
この方法は、液状のまま(グリセリンの様に)の物質を使うか後に固化(グリセリン・ゼラチンの様に)する物質を使うかで違いがあります。グリセリンは、いつでも簡単に載せればOKですが、カバーにゴミなどが付いたりすると、これを拭いたりすることが困難です。ゼラチンを含むものは、使用前に加温して、それが固化する前に適用するという煩雑さがあります。[6]
・ 遅い方法
固定した虫を,時計皿に入れたグリセリン5%水溶液に浸け,デシケータ中で約1月間水分を蒸発させる。
・ 早い方法
固定した虫を,時計皿に入れたA溶液(96%エタノール:グリセリン:水=20:1:79)に浸け,さらにこれを96%エタノールを入れた密封容器の中に置いて,35〜40度で12時間保温する。
次に,時計皿にB溶液(96%エタノール:グリセリン=95:5)を注ぎ,これをシャーレに入れて,シャーレの蓋を少しずらしておき,40度で少なくとも3時間放置。 [26]
プランクトンなど、一時プレパラートを作って見ていたものをそのまま固定し、「永久」保存したい場合に使われるようである。材料がスライドグラスにある程度固着していないと、水溶性の封入剤などを滴下しても材料が液の端に逃げてしまい、うまく封じることができない(プランクトンが水の中を漂っているような場合)。液が固化しないので頼りないのは仕方ない所か。
固定液として、フォルマリン、グリセリン、アルコールを等量ずつ混合した液をカバーグラスのふちから1滴入れ、適度に乾燥するのを待ってカバーグラスの周囲を密封する。[1]
ガムクロラールと同系統のもので、資料[30]によれば、別名ベルレーゼ液ともいう。各種の変法があるらしい(Higgins, Faure, etc.)。
なお、この資料には小さなムシを扱う際に有用な情報が多く掲載されていて、大変参考になる。
資料[31]に紹介されていた文献。
上のホイヤー氏液と抱水クロラールの量だけ1桁違うが、変法のひとつのようである。
引用注:原文の「朔」には草かんむりあり(コードにないため代用)。
ポリビニール・ラクトフェノール液。カマアシムシなどで使用する場合があるが、あまり一般的ではないらしい。カマアシムシについては中村修美氏の土姫虫のひとりごとを参照して下さい。以下は同サイトのページ、封入液と標本の作り方より転載。
土壌動物の封入液としては、ガムクロラール液(ホイヤー氏液)がよく使われています。しかしながら、私はあまり評判はよろしくないようですが、ポリビニール・ラクトフェノール液(ハインツ液と呼んでいますが)を使っています。カマアシムシではホイヤー液よりハインツ液の方が見やすいと言われています。でも、じっくり比較したわけではありません。[33]
材料 ポリビニールアルコール 10g 乳酸 35cc フェノール(15%) 25cc グリセリン 10cc 飽水クロラール 20g 蒸留水 60〜80cc 作成法 1.ポリビニールアルコールを蒸留水で溶かし、どろどろした塊にかきまぜる。 2.湯煎で、蒸留水を加えながら溶液にする。 3.かき混ぜながら、乳酸を加える。 4.グリセリンを加える。 5.さました混合液に、フェノールで溶かした飽水クロラールを加える。
以上ですが、これをグラスウールなどで濾過するか、放置して上澄みを使います。 ただし、ハインツ液は作成してから1年間は寝かせないといけないとの話を聞いています。作成してすぐの液の標本は結晶がでたりしてダメになってしまうとのことです。[33]
カマアシムシ類は通常プレパラート標本にしますが、特に変わった作成法はありません。ただし、サンプルを透徹しないと形質がよく見えません。透徹するために、以前は乳酸に一昼夜(本などでは一週間とある)漬けていました。現在はハインツ液で直接封入し、それを60℃で2,3日(できれば一週間)乾燥させます。これで十分検鏡できます。[33]
水溶性の封入剤の上を更に樹脂で固める方法が紹介されている。大変興味深い。
私は、残念ながら、虫には適用したことはありません。ホールスライドなど用いるといいかも知れませんが。ただ、AQUATEXは、周りにひびが入ることが稀にありました。大きい試料だとひびが入りやすいかもしれません。こつは、AQUATEXの使用量を出来るだけ少なくすることです。極少量のグリセロールを混ぜるとひびが入らない、という意見を聞いたこともありますが、私はやったことがありません。余裕がある方は試してみて下さい。[8]
一部では昔から使われているらしいが、学芸員1号氏によってniftyserve fmizube#3で紹介された。 誰でもどこでも気軽にプレパラート作成ができるように、というコンセプトがすばらしい。
しかし,それにしても水飴の屈折率は封入剤としては絶好です。実測した訳ではありませんが,屈折率1.5近くあるのではないでしょうか。私が常用している無水グリセリンよりも顕微鏡の光学系には適しています。[20]
果糖30gを蒸留水20ccと混ぜ、37度Cの恒温器中に24時間おく。時々かき混ぜる。濃い水飴状になったものを用いる。カーミンやアニリン染料の保存はよいが、ヘマトキシリンの退色が早い。[10]
アラビアゴム50g、蔗糖(局方の精製白糖がよい)50g、蒸留水500ccを混ぜ、水浴上で温めて完全に溶かす。溶けたら濾紙で濾す。うまく濾過できないようなら水をもっと加えてもよい。濾液を再び水浴にのせて温め、水分を蒸発させる。濃い飴の程度まで煮つまったら、防腐剤としてチモールの小塊を入れ栓をして貯えれば長く使える。
チモールは白血球にフェノールの顆粒を生じさせるから、血液の研究には注意を要する。重しをのせて余分の封入剤を押し出してやる。かたまるまでに10日以上もかかる。すっかり固まったら、水で湿したガーゼで周囲に付着したシロップを拭きとる。軟く気長にやる。ただし覆ガラスの周囲2-3mmを残しておく。[10]
私は、ガラスシャーレに裏向きにして、ゴミが付かない様保存しています。場所をとりますが。[6]
クロム明礬0.2gを蒸留水30ccに加温溶解。別に粒状ゼラチン3gに蒸留水50ccを加えて水浴(重湯煎)上で温めつつ溶かす。これ等両液を混ぜ、グリセリン20ccをも加えて、かき混ぜつつ水浴で温める。よく混ざったら防腐のため樟脳の小片を入れ室温で保存する。封入の仕方や封入後の処理はグリセリン・ゼラチンと同様でよい。[10]
フシダニ用の封入剤。フシダニとは植物寄生性の微小なダニで、足が4本。一見ダニとは思えないこんなやつです。
フシダニのプレパラート標本作成には専用の封入液であるキーファー氏液(Keifer's media)を使う。ハダニ類で使用されるホイヤー氏液は用いない。
ホールスライドにキーファー氏液(後述)のA液を入れ、この中に葉上のダニまたは液浸標本を入れて体が透明になるまで加熱する。(中略)
次に、別のホールスライドにB液を入れ、A液で透明にしたダニをすばやく移す。B液に移されたダニは体がふくれてくる。スライドガラスにC液を一滴たらし、この中でB液で処理したダニを移してカバーガラスをかぶせる。(後略)[17]
キーファー氏液の処方と作り方は次のようである。
A液:
1.アラビアゴム粉末1.0g, 2.レゾルシン3.0g 3.ヨウ化カリウム0.2g 4.ヨウ素0.35g 5.乳酸10.0ml 6.塩酸8滴
1〜4を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから5〜6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに4〜5時間以上入れるとできあがる
B液:
1.ショ糖0.5g 2.グリセリン0.5ml 3.抱水クロラール8.0g 4.ヨウ化カリウム0.2g 5.ヨウ素0.35g 6.ホルマリン30滴
1〜5を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに数時間以上入れるとできあがる
C液:
1.アラビアゴム0.5g 2.ショ糖0.5g 3.抱水クロラール7.0g 4.ヨウ化カリウム0.2g 5.ヨウ素0.2g 6.ホルマリン18滴
1〜5を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに数時間以上入れるとできあがる[17]
材料中の水分をアルコール、キシロールなどを使い脱水した後、樹脂で封入します。パラフィン切片を封入するのにごく一般的に行われますが、何段階もの作業が必要で、めんどうです。
最も一般的(だった?)封入剤。キシロールで適当に柔らかくして使う。
私は、バルサムは、今はほとんど使っていません。バルサムに代えて使っている封入剤はEUKITT(商品名)です。ドイツのO.Kindler社のもので、発売元は高橋技研ガラス株式会社で、メルク社のEntellan Newとほぼ同じ様なものと認識しています。これもキシレンが溶剤として使われています。値段は、と業者の方に確認しようとしたら、Entellan New(こちらは100ml で2700円だそうです)と同じぐらいとのことでした。[7]
八洲薬品のページに新製品として掲載(97年4月2日)。粘度:約750cps(25℃)、屈折率:約1.50(20℃)、和光のコード199-11311、希望納入価格250mlで7000円とのこと。詳細は不明だが、キシレンフリーの封入剤が求められている時代なのは確かなようだ。
なお、アパチ封入剤(100mlで4500円)とアパチーのゴムシロップの関係は不明。
珪藻の殻を封入する際に使われる。屈折率が高いのが特徴。なお、資料[28](東京学芸大学生物学研究室・真山研究室「珪藻の世界」)には珪藻細胞から有機物を取り除く「クリーニング」ほか、珪藻の観察法がわかりやすく解説されており必見。
「やせ」は,おおむねどの封入剤にもあります。たとえば,カナダバルサム(松ヤニ)はキシレンでゆるめて使いますが,乾燥するとキシレンが飛ぶので飛んだキシレンの分だけやせます。組織切片標本のように,試料の厚さが5ミクロンなどという場合は「やせ」は問題になりませんが,試料の厚さが50ミクロン(0.05ミリ)なら「やせ」は大問題です。やせやすい封入剤で標本を作ると乾燥するにつれて標本が泡だらけになってしまいます。[20]
なお原生動物は多くの場合、永久標本にすると、ほとんど核しか見えません。酢酸メチルグリーンで簡易染色して、液が乾かないうちにカラー撮影したほうが余程おもしろい絵になります。[5]
昔,一時クマムシのプレパラートを作っていたころは,生きたクマムシを少量の水ごと時計皿に拾い,そこへ,熱した70%エタノールをピペットでどばっと流し込み,熱殺しておりました。こうすると,伸びた状態で死ぬので,それを70%エタノールで固定してからホイヤー氏液(ガムクロラールでもほとんど同じと思います)に封じると,体のよく伸びたプレパラートができます。生きてるのを何もしないでいきなり70%アルコールにつけると収縮してしまいます。ワムシはやったことがないのですが,同じやり方で伸びた状態のプレパラートができるのではないかと想像します。[14]
体が透明になるのは仕方ないのですが(透けないと黒いシルエットしか見えませんから),位相差顕微鏡や,かなり高価ですが(といっても共焦点レーザー顕微鏡などとは比べものになりませんが)ノマルスキー微分干渉顕微鏡を使えば,体の内部の構造が結構観察できます。[14]
説明不十分で失礼しました。ホルマリンは,「酢漬け」の代わりにミジンコを「ホルマリン漬け」するときに使います。濃度はホルマリン原液の10倍〜20倍(10〜5%ホルマリン)で,ミジンコを浸けておく時間は1晩〜数日です。室温で大丈夫です。以前に村山さんとのやり取りにもありましたが,ホルマリンは酸化してギ酸になるので,それを中和するため,ホルマリン原液のビンに大理石のかけらなどを入れておくことを薦めます。また,ホルマリンの酸化は紫外線によって進むそうなので,ホルマリンは原液でも希釈液でも,日光が当たらない所に置くか,褐色ビンに貯えるか,はたまたビン全体をアルミホイルで包んでおくのが良いです。希釈濃度はおおざっぱでかまいません。私もいつも「目分量」です。[25]
(順不同、敬称略)
[1] 日本淡水藻図鑑(廣瀬弘幸、山岸高旺編集、内田老鶴圃新社1977)p.840
[2] 塩野拡久 [jissen02117]
[3], [4], [14] 鶴崎展巨 [jissen02118], [jissen02134], [jissen02136]
[5], [12], [13] 熊沢秀雄 [jissen02121], [jissen02132], [jissen01590]
[6] 渡辺勇一 [jissen02119]
[7], [8] 浅賀宏昭 [jissen02126], [jissen02133]
[9] 布山喜章 [jissen02135]
[10] 顕微鏡標本の作り方(田中克己、裳華房1954)pp.235-236
[11] 八木和主男 [jissen02116]
[15] 土壌動物学(青木淳一、北隆館1973)p.632
[16] 原色日本蘚苔類図鑑(岩月善之助・水谷正美、保育社1972)p.380
[17] フシダニ科の概説と検索 上遠野富士夫(日本原色植物ダニ図鑑、江原編、全国農村教育協会1993)pp.219-220
[18], [20], [21], [23], [24], [25], [26] 学芸員1号(野田泰一)[nif01500], [nif01531], [nif01513], [nif01569], [nif01631], [nif01633], 私信
[19], [22] 村山茂樹 [nif01507], [nif01508]
[27] 八洲薬品 webpage http://web.infoweb.ne.jp/scol/files/wako/soft.html
上記ページは行方不明。和光純薬カタログページ参照のこと。
[28] 簡単にできる珪藻殻の観察方法 http://www.u-gakugei.ac.jp/~mayama/diatoms/collection%20and%20cleaning.htm(東京学芸大学・真山研究室 website)
[29] 真山茂樹 私信
[30] Laboratory Procedure Manual (U.S. Food and Drug Administration, Office of Regulatory Affairs, 1997) Chapter 18; ENTOMOLOGIST TRAINING http://www.fda.gov/ora/science_ref/lpm/lpchtr18.html (FDA website in the public dmain)
[31] David W. Kramer http://www.bio.net//hypermail/PLANT-EDUCATION/9512/0050.html
[32] 岩月善之助 私信
[33] 封入液と標本の作り方 http://www.ne.jp/asahi/nakamura/osami/other/heinz.htm(中村修美 website 土姫虫のひとりごと )
[34] スイバ(性染色体) 藤島弘純(生物観察実験ハンドブック 今掘・山極・山田編 朝倉書店1985)p.123
注1:[jissen?????] とあるのはjissen-MLへの投稿(主に98/12/09-98/12/16)です。
注2:[nif?????] とあるのはniftyserve fmizube#3への投稿(98/03/15-98/04/22)です。
1998/12/20 初版(非公開)、1999/01/27 第2版(公開)
1999/03/22 ワラップ、ハインツ液
1999/05/07 中村氏アドレス変更
2004/12/19 xhtml4.0 に書き換え、文法チェック