プレパラートの作製(封入剤等の情報)

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Last update: 2004/12/19


http://bios.sakura.ne.jp/gf/note/recipe.html (連絡先: gen-yu@mtc.biglobe.ne.jp

このファイルは、各種文献やonline情報などをもとに、佐々木玄祐が編集したものです。
編集者の判断で、投稿の一部のみを選択して再配置するなど、大幅な編集を加えてあります。ご容赦ください。
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  1. 頭に丸印が付いている記事は引用です。編集者は直接経験してないものがほとんどです。
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各著作者、関係する方々に深く感謝いたします。


目次

A) カバーグラスのシール
ワセリンパラフィンワラップマニキュアエポキシ系糊/塗料バルサムパラフィンバルサム
B) 水溶性の封入剤
グリセリン系 グリセリンフォルマリン+グリセリン+アルコール
クロラール系 ガムクロラールホイヤー氏液 (Hoyer's Medium)蘚苔類用の液ハインツ液
最近のもの  Aquatex(メルク社)
水飴系    水飴レブロース・シロップ levulose syrupアパチー APATHY のゴムシロップ
ゼラチン系  グリセリン・ゼラチングリクロジェル glychrogel
特殊封入剤  キーファー氏液 (Keifer's media)
C) 樹脂による封入
カナダバルサムエンテラン(Entellan New:メルク社)EUKITTソフトマウント(Softmount:和光)プルーラックス Pleurax
D) その他Tips
E) 情報源

A) カバーグラスのシール

カバーグラスの周囲を何らかの材料でふさぎ、封入に使った液の蒸発を防ぐ方法。水溶性の封入剤を使用する際も、多くの場合はシールをした方が長く保存できる。単なる水で封入した場合は、シールしても長期保存は困難。

  1. ワセリン

    スパーテル(金属の薄いへら)を加熱してワセリンのかたまりに触れると、ワセリンが溶け、スパーテルに付く。固まる前にカバーグラスの周りをぐるりとなぞってシールする。押しつぶし法による植物の染色体標本を作った時、とりあえずこの処理をして乾燥を防ぐ(後日カバーを外し、永久プレパラートにする)。

  2. パラフィン

    前項に同じだが、経験なし。ワセリンは固まっても柔らかいが、パラフィンは固いのではがれ易いかもしれない。

  3. ワラップ

  4. マニキュア

    化粧品のマニキュア。1回塗っただけでは不十分で、失敗した事が多い。

  5. エポキシ系糊/塗料

  6. バルサム

  7. パラフィンバルサム

目次


B) 水溶性の封入剤

昆虫、菌類などの分野では古くからよく使われているらしい。後述の樹脂による封入に比べ手軽に処理できる。また、一部の色素は、アルコール・キシロール等による脱水を行うと退色してしまうため、樹脂による封入ができない場合がある。

  1. グリセリン

    ・ 遅い方法
     固定した虫を,時計皿に入れたグリセリン5%水溶液に浸け,デシケータ中で約1月間水分を蒸発させる。
    ・ 早い方法
     固定した虫を,時計皿に入れたA溶液(96%エタノール:グリセリン:水=20:1:79)に浸け,さらにこれを96%エタノールを入れた密封容器の中に置いて,35〜40度で12時間保温する。
     次に,時計皿にB溶液(96%エタノール:グリセリン=95:5)を注ぎ,これをシャーレに入れて,シャーレの蓋を少しずらしておき,40度で少なくとも3時間放置。 [26]

  2. フォルマリン+グリセリン+アルコール

    プランクトンなど、一時プレパラートを作って見ていたものをそのまま固定し、「永久」保存したい場合に使われるようである。材料がスライドグラスにある程度固着していないと、水溶性の封入剤などを滴下しても材料が液の端に逃げてしまい、うまく封じることができない(プランクトンが水の中を漂っているような場合)。液が固化しないので頼りないのは仕方ない所か。

  3. ガムクロラール

  4. ホイヤー氏液 (Hoyer's Medium)

    ガムクロラールと同系統のもので、資料[30]によれば、別名ベルレーゼ液ともいう。各種の変法があるらしい(Higgins, Faure, etc.)。
    なお、この資料には小さなムシを扱う際に有用な情報が多く掲載されていて、大変参考になる。

    資料[31]に紹介されていた文献。

    Humason, Gretchen L. 1967.
    Animal Tissue Techniques. 2nd Ed. San Francisco: W. H. Freeman. pages 131-132.
    Beek, R. M. 1951.
    Improvements in the squash technic for plant chromosomes. El Aliso. 3: 131-133.
    Anderson, L. E. 1954.
    Hoyer's solution as a rapid permanent mounting medium for bryophytes. Bryologist 57: 242-244.

  5. 蘚苔類用の液

    上のホイヤー氏液と抱水クロラールの量だけ1桁違うが、変法のひとつのようである。

    引用注:原文の「朔」には草かんむりあり(コードにないため代用)。

  6. ハインツ液

    ポリビニール・ラクトフェノール液。カマアシムシなどで使用する場合があるが、あまり一般的ではないらしい。カマアシムシについては中村修美氏の土姫虫のひとりごとを参照して下さい。以下は同サイトのページ、封入液と標本の作り方より転載。

  7. Aquatex(メルク社)

    水溶性の封入剤の上を更に樹脂で固める方法が紹介されている。大変興味深い。

  8. 水飴

    一部では昔から使われているらしいが、学芸員1号氏によってniftyserve fmizube#3で紹介された。 誰でもどこでも気軽にプレパラート作成ができるように、というコンセプトがすばらしい。

  9. レブロース・シロップ levulose syrup

  10. アパチー APATHY のゴムシロップ

  11. グリセリン・ゼラチン

  12. グリクロジェル glychrogel

  13. キーファー氏液 (Keifer's media)

    フシダニ用の封入剤。フシダニとは植物寄生性の微小なダニで、足が4本。一見ダニとは思えないこんなやつです。

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C) 樹脂による封入

材料中の水分をアルコール、キシロールなどを使い脱水した後、樹脂で封入します。パラフィン切片を封入するのにごく一般的に行われますが、何段階もの作業が必要で、めんどうです。

  1. カナダバルサム

    最も一般的(だった?)封入剤。キシロールで適当に柔らかくして使う。

  2. エンテラン(Entellan New:メルク社)

  3. EUKITT

  4. ソフトマウント(Softmount:和光)

    八洲薬品のページに新製品として掲載(97年4月2日)。粘度:約750cps(25℃)、屈折率:約1.50(20℃)、和光のコード199-11311、希望納入価格250mlで7000円とのこと。詳細は不明だが、キシレンフリーの封入剤が求められている時代なのは確かなようだ。

    なお、アパチ封入剤(100mlで4500円)とアパチーのゴムシロップの関係は不明。

  5. プルーラックス Pleurax

    珪藻のを封入する際に使われる。屈折率が高いのが特徴。なお、資料[28]東京学芸大学生物学研究室・真山研究室「珪藻の世界」)には珪藻細胞から有機物を取り除く「クリーニング」ほか、珪藻の観察法がわかりやすく解説されており必見。

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D)その他 Tips

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E) 情報源

(順不同、敬称略)

[1] 日本淡水藻図鑑(廣瀬弘幸、山岸高旺編集、内田老鶴圃新社1977)p.840
[2] 塩野拡久 [jissen02117]
[3], [4], [14] 鶴崎展巨 [jissen02118], [jissen02134], [jissen02136]
[5], [12], [13] 熊沢秀雄 [jissen02121], [jissen02132], [jissen01590]
[6] 渡辺勇一 [jissen02119]
[7], [8] 浅賀宏昭 [jissen02126], [jissen02133]
[9] 布山喜章 [jissen02135]
[10] 顕微鏡標本の作り方(田中克己、裳華房1954)pp.235-236
[11] 八木和主男 [jissen02116]
[15] 土壌動物学(青木淳一、北隆館1973)p.632
[16] 原色日本蘚苔類図鑑(岩月善之助・水谷正美、保育社1972)p.380
[17] フシダニ科の概説と検索 上遠野富士夫(日本原色植物ダニ図鑑、江原編、全国農村教育協会1993)pp.219-220
[18], [20], [21], [23], [24], [25], [26] 学芸員1号(野田泰一)[nif01500], [nif01531], [nif01513], [nif01569], [nif01631], [nif01633], 私信
[19], [22] 村山茂樹 [nif01507], [nif01508]
[27] 八洲薬品 webpage http://web.infoweb.ne.jp/scol/files/wako/soft.html
上記ページは行方不明。和光純薬カタログページ参照のこと。
[28] 簡単にできる珪藻殻の観察方法 http://www.u-gakugei.ac.jp/~mayama/diatoms/collection%20and%20cleaning.htm東京学芸大学・真山研究室 website)
[29] 真山茂樹 私信
[30] Laboratory Procedure Manual (U.S. Food and Drug Administration, Office of Regulatory Affairs, 1997) Chapter 18; ENTOMOLOGIST TRAINING http://www.fda.gov/ora/science_ref/lpm/lpchtr18.html (FDA website in the public dmain)
[31] David W. Kramer http://www.bio.net//hypermail/PLANT-EDUCATION/9512/0050.html
[32] 岩月善之助 私信
[33] 封入液と標本の作り方 http://www.ne.jp/asahi/nakamura/osami/other/heinz.htm(中村修美 website 土姫虫のひとりごと
[34] スイバ(性染色体) 藤島弘純(生物観察実験ハンドブック 今掘・山極・山田編 朝倉書店1985)p.123

注1:[jissen?????] とあるのはjissen-MLへの投稿(主に98/12/09-98/12/16)です。
注2:[nif?????] とあるのはniftyserve fmizube#3への投稿(98/03/15-98/04/22)です。

目次


1998/12/20 初版(非公開)、1999/01/27 第2版(公開)
1999/03/22 ワラップ、ハインツ液
1999/05/07 中村氏アドレス変更
2004/12/19 xhtml4.0 に書き換え、文法チェック