Last update: 2000/12/14
一般の方には「プランクトン」(plankton)という言葉に誤解があるようです。岩波生物学辞典(4版)によれば、
【同】浮遊生物
海洋・湖沼・河川などの水中で浮遊生活し,遊泳力をもたないか,あっても小さいために水の動きに逆らって自らの位置を保持できない生物の生態群.
ですので、大きさは関係なし。 クラゲなど、肉眼で見えるものも立派な「プランクトン」です。 顕微鏡で見るような小さなものだけが「プランクトン」、ではありません。 なんか、イメージ違います?
逆に小さなものでも、水底にへばりついてるやつなんかはプランクトンではない訳ですね。 いまのところ私のサイトには、 どっちかというと、この手のやつが多いような気がする。
さて、実はここまでは前フリ(!)
うん、それは知ってるよ、
だよね、という方! それ、ちょっと違うんだ、というお話です。 この分類は、かのヘッケルが提唱したらしいのですが、考えてみれば、
ベントスだけは場所で、あとの二つは移動の特性
でしょ?3つならべるのは論理的ではない!っていうことで、
という分け方が、最近の流れになってるようです(?)。ご存知だったあなたは偉いです(って知らなかった私が無知なの ^^?)。→2000/12/14 追記参照
このペラゴス、という概念はM.P.Eresという方が、1961年に提唱したんだとか。 でも、ニューストンてのは場所だしプランクトンと重ならないのかな?水面上でもいいみたいだし。うーむ…。
ま、「ニューストン」は1917年に別の人が提唱した言葉なんだそうで(ウキクサとかカツオノエボシとかアメンボとか入る)、これは別の話、要は二大別するということかな?でもねぇ、プラナリアなんかは普段底にいるけど、時々水面に張り付いてますよ。ヒドラもそう ^^?
2000/09/17 追記
David Wrobel and Claudia Mills 1998. Pacific Coast Pelagic Invertebrates.
クラゲの類の図鑑として安価かつ充実してると評判の本ですが(Monterey Bay Aquarium が出している)、ここにも Pelagic って使われていますね。今気が付きました。
実際にはペラゴスという用語自体はあまり使われてはいないようです。 例えば、WebSPIRE というシステムで調べると(1980年以降)、
pelagos 12, plankton 6229, nekton 178, benthos 2145
の論文で使われているそうです。ちなみに形容詞は大変ポピュラーで、
pelagic 5424, planktonic 5131, nektic 4, benthic 12354
とのこと。 例えば、イワシやサバなどを pelagic fish と呼び、日本語では「浮魚」。 また、pelagic には遊泳性・外洋性のイメージもあるそうです。 (以上は京都大学水産実験所の上野正博さんに教えていただいきました。 ありがとうございました。)
うーん、そうなのかー。でも形容詞がポピュラーというのは…、 と図書館でオックスフォード英語辞典(OED2: 1989)を見てみました。 すると、'pelagos' は、載ってませんし、'pelagic' については、
Of or pertaining to the open or high sea, as distinguished from the shallow water near the coast; oceanic; now spec. living on or near the surface of the open sea or ocean, as distinguished from its depths. Also applied spec. to the environment in any part of the sea away from the littoral and benthic regions and to marine life at any depth that is independent of these regions.
などとありました。うーむむむ。
しかし「分け方」としては、やはりペラゴスを設定する方がすっきりすると思うのですが、皆様いかがでしょうか ^^?
ペラゴスの語はjfishのドリーさんのご教示で初めて知りました。ここに記して感謝します。また、本項は岩波生物学辞典(4版)を参考にしてます。ぜひ直接読んで下さいね。
(文責:佐々木玄祐 gen-yu@mtc.biglobe.ne.jp)
公開: 2000/06/10