チスイビル: Hirudo nipponia

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Last update: 2005/12/06

どうも、チスイビルではなくてウマビルらしいです。ウソ書いてて申し訳ありません(お恥ずかしい)。追って訂正しますが、取り急ぎお知らせまで。


Hirudo nipponica

チスイビル: Hirudo nipponia Whitman, 1866. (長野県松本市)


ヒルと言えばコレでしょう、「チスイビル」。かつて、水田などで人の血を吸って困らせていた連中です。でも、町育ちの私は今も田圃にはほとんど縁がなく、じっくり見たのは実は今回が初めて。

排水溝そばの浅い水溜りを這い回っていました。また、これ以外にも数匹とご対面。水中で泥の中に半分もぐったり、体をくねらして泳いだりしてるのがいました。最近では随分減ったということですが、結構いるもんですね。

しかし、こうしてみると、すごい画像。止まっていても相当イヤンな感じですね。でも、ホントにイヤンなのはその動き。幸か不幸かムービーはありませんが、体を伸縮して結構速く動きます。上の写真は、まぁ標準状態というか、そんな感じで5cm程度でしょうか。右側、細いほうが頭です。

なお、本を見ると、首をもたげて獲物を探すような「探り行動」の写真がありましたが、そういうのは見られませんでした。ちょっと見てみたいような見たくないような…。


さて、悪趣味かもと思いつつも写真をよくご覧いただきたいのは、体に節があるところです。もう少し良くわかるように、別の写真から切り出してお目にかけます(下図)。

body head

ヒルというと、体全体がヌメヌメツルツルで「節」とは無縁なイメージですが、こうしてみるとミミズなんかと同じですね。実際、「環形動物」という同じグループ(門)に属しているわけです。

ほかにこういう構造をもつのは「節足動物」: エビ・カニ・昆虫類など。イモムシなんかを思い出して下さい。環形動物とあわせて、Articulata 体節動物、環節動物という言い方もするようです。

さて、この体の節(体節: segment )の話をもう少し。以下、岩波生物学辞典第4版から引用します(強調は引用者)。

動物体の前後軸に沿って周期的に繰り返される立体的構造単位.…(略)…,例えばミミズにおいては外観上の分節構造とまったく一致して各分節ごとに1対の腎管(体節器)と腹神経節・横行血管などをもち,かつ隔膜と懸腸膜とにより包まれた左右1対の体腔を収める.…(略)…環形動物中,ヒル類では1個の体節が外観上はさらに一定数の体環に分れる

ははぁ、要するに、あの節1つ1つは「体環: annulus 」と言って、ミミズの場合は「体節=体節」だけど、ヒルの場合は「複数の体環→体節」となっている、という訳ですね。内部の構造(腎管とか神経とかしきりの膜とか)まで見た場合の体のつくりの単位が「体節」である、と。ふーむなるほど。

じゃあ、どこからどこまでが1つの体節なの?外からは無理?…というと、「体節感覚器: segmental papilla 」なんていう項目がありました。これも生物学辞典から引用します。

ヒル類の体の背面,各体節ごとの一定の位置に左右相称的に配列する小さい乳頭状突起.神経が分布する.頭部にあるものは眼,およびいわゆる杯状器官(cupshaped organ),他は化学受容器である.

でも、これ、写真じゃ判りませんですね。標本などにして顕微鏡などでじっくり見ればわかるかもしれませんが。「体環」の数を数えてみると、少なくとも90個以上はありましたが、「体節」の数はヒルの場合すべて34だそうです。参考までに、上の拡大したものの元のファイルを置いておきます (IMGP3379.JPG 1.5MB Pentax *istD の jpg 生ファイル。大きいのでご注意)。シャープネスイマイチですが、画像処理などすればもしかしたら…とも思います。ご興味のある方はどうぞ。


さて、体節ネタでもうひとつ。「体節」っていうと、生物教師としては「カエルの発生」になるわけです。「尾芽胚の横断面、ワキの中胚葉は『体節・側板』」とか言って説明する、あの「体節」。

恥ずかしながら知らなかったんですが、これ、今回の「体節」とは別物なんですね。ミミズ・ヒルの方は "segment"、カエルの方は "somite" というらしい。「分節構造」ということでは同じだけれど、脊椎動物の胚発生において,特に中胚葉に顕著にみられる分節構造.っていうのが somite とのこと(生物学辞典)。でも、ホメオティック遺伝子とかのこともあるから、関係は深いんだろうと思いますが。

う、ホメオティック遺伝子、この辺もダメだなぁ…。教科書なんかにも出てきてるんですけどね。なんかいい(素人にもとっつきやすくてまとまってるような)資料がないですかね。勉強してお前がやれ、ってことなんでしょうか…。


最後に学名の話。ヒルの学名(属名)は Hirudo ヒルド。偶然でしょうけど、すごいなぁ。これ、リンネの命名。Hirudo medicinalis Linnaeus, 1758 (医用ビル)という医療用に使われていた虫につけられています。日本のチスイビルとは別種。

なお、チスイビルには Asiaticobdella という属名が使われることもあるようです(野外の毒虫と不快な虫. p. 254. 全国農村教育協会 1999)。どっちが妥当なのか、私には判りませんので、よく見る方にしました。いいかげんですみません。

あー、体節で思い出した。来週は補習せねばならぬのであった…。うぅー。


撮影: 2005/07/27 公開: 2005/08/02