交尾中 (フナムシ: Ligia exotica)

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Last update: 2004/10/31
Ligia exotica


皆様ご存知、フナムシです。場所は神奈川県三浦半島。なんか普通より動きが鈍い奴がいるなぁ、と思って良く見たら、ただいま交尾中。それで、普段なら近づけない距離で撮影できました。やや見難いですが、下にメスが見えます。

こうして見ると、体が平べったいところなど、やっぱりゴキブリと似とるなぁ、と思います。脚が多いのも不気味パワーを倍増させていて、上の写真では脚は6本写っていますが、この類(Isopoda: 等脚目というグループ)、本当は7対あるようです(って捕まえて見た事ないんですが…宿題)。

でも、同類で同じ数の脚がある、ワラジムシやダンゴムシは人気者と言っても良いのに、ちょっと気の毒な気がします。上の写真でも大きい目がなかなかのチャームポイントのような気が…(って無理がありますか?)。やはり問題は集団でのあの「ササッー」という動きでしょうか?

なお、上で「交尾中」と書きましたが、「日本動物大百科」(平凡社 1997, 第7巻 p.135) を見ると、「交尾の準備行動」としている、上と同じような(もっと良い)写真があります。何をもって交尾というのか、ということだと思いますが、いまのところ詳細は不明です。等脚目には生殖突起(陰茎)もあるそうです。


A Ligia in water さて、実は、今回もっと驚いたことがありました。潮だまりの海水の中にフナムシがいたのです。左の写真をみて下さい。画面の右側 3/4 位が水の中です。水面が少し白っぽくなっていて、水面直下ではありますが、確かに水中にいるのが分かると思います。

よくみるとお腹側に泡がついているようですし、ずっと水の中でも無いでしょうが、水の中を動いているのにはかなりびっくりしました。もう少し深いところにいる虫もいました。ただし、陸上のように群れてはいませんでした。

そもそも、普通フナムシはもっと陸に近い岩場で見る気がします。なお、幼生は水中でも暮らせる、という話 (*) があるようです。しかし、特に小さい感じはしませんでした。やはり真相は不明。

(*) 横須賀市教育情報センターの「三浦半島の海辺の生き物ウオッチング」というページに記述があったらしい。また、「図解生物観察事典」(岡村ほか・地人書館)に「えらが常に湿っていなければならず、満潮時は海水中でも生活できる」とあるというが未見。


本当はもう少しいろいろ調べてから書きたかったのですが、勢いで書いてしまわないといつになるか分からない、ということで、また分かったら加筆訂正したいと思います。いくつか参考サイトをあげておきます。

  1. 等脚目(ワラジムシ目)http://www.tsm.toyama.toyama.jp/curators/nunomura/g114.htm (富山市科学文化センター・布村 昇)
     このグループの一般的な特徴がわかると思います。

  2. フナムシの生息環境と進化 http://www2.hama-med.ac.jp/w1d/biology/research/ligia.htm(浜松医科大学針山研究室
     フナムシの体液の塩濃度は海水に近いとか、水を脚で吸い上げて肛門から吸収するとか、興味深い記事があります。この研究室は構造色であるとか、節足動物の視覚であるとか、なかなか面白いことをしています。ユクスキュルの環世界なんて、久しぶりに聞いた気がして、ちょっと嬉しくなりました(で、検索したら、松岡正剛による書評も発見)。

  3. Welcome to Ligia HOMESHORE http://www.gsu.edu/~bioasx/lindex_j.htm (Georgia State University 櫻井 全)
     神経生理学の研究をしている方です。フナムシの記事は英語ですが、別に日本語のところもあります。個体発生の途中で拍動調節のしくみが変わるんだとか(参考:筑波大学 山岸教授の記事)。いろんなことに使われてるんですね。 そういえば、先輩でフナムシの内分泌をやってた方がいましたっけ。あまり直接のお付き合いは無かったですが、懐かしい。

最後に蛇足。フナムシの学名(属名)の "Ligia"っていうのは、どうも女性の名前らしいですね。Googleで画像検索してみて知りました。これはやはりちょっと、何と言いましょうかその…マズイ気が。


撮影: 2004/06/19 公開: 2004/10/31