ケヤキハフクロフシ(欅葉袋付子)

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Last update: 2003/01/20
a gall on a dried leaf

この冬(2002-2003)の東京は、いつになく寒さが続いていますが、久しぶりにすこし暖かかった先日、ひなたぼっこしながら散歩中、ケヤキの枯葉の上にこいつを発見。

キノコのようにも見えますが、ムシが刺激を与えてできた「虫こぶ」です。なお、昆虫以外のもののが原因の場合もあるので、英語の「ゴール: gall」 を使った方が良いという人もいます。

カメラを少し引くとこういう感じ。サイズは高さ1cm弱です。もちろん、もう虫は入っていません。気をつけて見ると、結構あります。どれも、一番太い葉脈(主脈)から微妙にずれた位置にはえていて、口が開いているのもあります(上右)。ここから虫が出るのか、それとも単に乾いて割れただけ?


とりあえずWebを検索してみると、あっという間に「これ!」というのを発見。

http://www.h2.dion.ne.jp/~usako/ikimono18.html (晶子(しょうこ)のお庭は虫づくし)

ケヤキヒトスジワタムシによる虫こぶとのことで、緑色をした若い時の写真があります。

ところが、探してみると、このほかに ケヤキフシアブラムシ によるものとして紹介されているのもあります。こちらは赤い色になるし、形もちょっと違う感じ。
http://www5.ocn.ne.jp/~mizonoen/newpage4.html ((株)ランテック・(有)溝口農園)

そうか、それじゃあ私が見たのはどっちなのかな、というので調べてみたところ、結論としては同じムシのようです。ただ、ちょっとややこしい話があったので、以下にご紹介。


まず、「ケヤキフシアブラムシ」というのは、「日本原色アブラムシ図鑑」(森津孫四郎, 1983)、「ケヤキヒトスジワタムシ」は「日本原色虫えい図鑑」(湯川淳一・桝田長 編著, 1996)で使われている和名。そして、学名を見ると、前者では Colopha moriokaensis (Monzen) 、後者では Paracolopha morrisoni (Baker) となっています。

最初、てっきりこれは別物だと思ったのですが、次の文献で学名の変更がされていました(和名についての記述はない模様)。

まぁ、学名の変更というのは結構あるのですが、和名まで変わっているのは、ちょっとびっくりしました。学名と和名と両方違っていたら、別物だと思っちゃう。上記文献(p. 3)には、

Generations occurring on the primary host and those on the secondary host are so different as to look as if they belong to different taxa.

なんて書かれていますので、同じ虫が生活史の段階でいろいろ形が変わって、それぞれに和名が付いて…というようなこともありそうです。つまり、「オタマジャクシはカエルの子」、でも『オタマジャクシ』と『カエル』は別の名前、のような話。でもねぇ…真相は不明。

なお、上にリンクした溝口農園のページでは、虫こぶの色が最初は赤くなっています。上の両図鑑とも、虫こぶの色は最初緑色になっていますので、別物の可能性あるかも。


ところで、 「ワタムシ」というのは、綿のようなものをまとった「アブラムシ」の一グループということですが、これは雪の降るころにふわふわ飛ぶという「雪虫」の正体でもあるそうです。

この虫こぶがあるということは、ここでも雪虫がいるということ…?これから気をつけることにします。

複雑な生活史のことも含め、下記のページが参考になります。

あと、このページも面白かったので、メモ。


撮影: 2003/01/10 公開: 2003/01/20