上の図、まるで枝を張る木を描いた絵のようですが、カイコ(幼虫)の解剖実習のときに撮った気管の写真です。特別な画像処理をしたわけではありません。
タネを明かせば、バックが灰色っぽいのは試料のまわりを脂肪だらけにしちゃったためです(青い色はうっかりついた染色液)。
我々を含めた脊椎動物(両生類以上)の気管 (trachea) は、口から肺までの単純な管であるのに対して、節足動物の気管では、この写真のように多くの分岐をしています。
分岐した先はどんどん細くなってゆき、その終末部分で体の組織とガス交換をしている、といわれていますが、空気が出入りする「口」はどこか?というと、「気門 (stigma) 」という孔です。
左の写真はカイコガの幼虫の腹部を横から見たところです。各体節に一つずつ(見えない向こう側にも一つずつ)黒い斑点があります。コレが気門です。体全体で10対あります。
この気門をクローズアップしてみたのが下左の写真です。外からの撮影ですが、画面左の方に解剖した内側にあった気管の末端がちょっと入り込んでしまいました。体表の毛なども分かるし、妙にキレイ。開閉はするんですかね?
右は気管の比較的太い部分のアップで、らせん状(になってると言われている)模様が見えます。これも写真というより絵のような感じがしてしまう。
気門と気門の間も気管でつながってるとか、気管系だけでもいろいろあるし、ほかにもご紹介したいことは沢山あるのですが、またの機会とします。
なお、英語で"stigma" っていうと主に「汚名」とか「不名誉の印」のような意味ですが、もともとは「ポチっとした斑点」みたいなものから来てる言葉のようですね。 確かに気門は「ポチポチ」してます…。
それから、植物の雌しべの先端(柱頭)も同じく"stigma"と言いますね。ふーむ。