黄色の毛のように見えるのは、付着しているケイソウ
部屋の隅に忘れ去られていた、汚い水が入ったビーカー。冬の一日、ちょっと時間ができたので、顕微鏡で見てみました。
空振りも多いのですが、今回はヒット!左のようなものを発見(暗視野照明)。
糸状の藻類の一部の細胞だけが緑色のまま残り、他は枯れてしまった、という感じ。 沢山見える茶色いものは、いわゆるデトリタスってやつ。植物体などの分解物だと思います。
拡大すると、右のようになります。先端のものはちょっと違う形をしてます(右)。
枯れた部分がすっかりちぎれてしまい、緑色の「タネ」、のようになっているものも結構ありました。これは、きっと条件がよくなれば発芽するに違いない!
そこで試してみました。シャーレに新しい水と「タネ」を入れて日の当たる窓際に放置(2/19開始)。同じものを追いかけている訳でありませんし、倍率もちょっと狂ってますが、大体の感じは分かると思います。
この段階では、まずガラスに固着するためか、まっすぐに伸びないでごちゃごちゃと方々に枝を伸ばしていますが、このあと長く伸びてきます。
2/24 | 2/28 | 3/6 |
この写真の「タネ」のようなものを「アキネート:akinete」と言うようです。ギリシア語で「動かない」という意味らしい。
藍藻類・緑藻類に見られる,栄養細胞がそのまま壁が厚くなり貯蔵物質を豊富にたくわえて胞子の休眠期のようになった特殊な生殖細胞.(岩波生物学辞典 4版)
なお、細胞の内容が濃縮されて、細胞壁の内側に新しく厚膜ができる場合があり、これは「ゴニジア:gonidia」というそうです。種類によって、そのどちらか、または両方できるとのこと。(広瀬弘幸 藻類学総説 p.70)
さて、この緑藻が何者なのか、ですが…。
上記の「藻類学総説」p. 470 には、このページの写真とかなり似た図が Pithophora kewensis のアキネートとして出ています。また、山岸高旺「淡水藻類写真集ガイドブック」p. 96 にも似た写真あり。一応、この属(ピトフォラ、アオミソウ、フシマダラなどの和名がある模様)じゃないのかな、と考えています。
なお、ミクロスポラ属 (Microspora)、クンショウモ属 (Pediastrum)、ヨツメモ属 (Tetraspora) などもアキネートを作る緑藻の例としてあげられていますが、これらは特殊な条件で作るとのこと(生物学辞典)。
探したら、以前にも撮影してました。トップと右の写真がそれです。アキネート以外の部分が枯れつつある、っていう感じですね。
余談: Microspora という属の名前は、「微胞子虫」という動物のグループの名前でもあります。このへんのこともちょっと面白いので、いずれそのうち書きたいと思ってますが…。