ケカビの仲間(Mucorales)

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Last update: 2003/04/13
sporangia of Mucorales

さくらんぼ?


これ、ケカビの仲間(ケカビ目: Mucorales )の胞子嚢です。胞子嚢 (sporangium) というのは文字通り「嚢」=ふくろ で、枝の先に胞子が裸で着いているのとは違うようです。

イマイチはっきりしませんが、「分生子: conidium 」という言葉は、このような袋の中にできる胞子には(無性的にできたものでも)使わないみたいですね…(?) → 2003/04/13 補足

spores surface

胞子が沢山こぼれているのもあります。 5 x 7 um 程度の楕円形で、ちょっと角があるように見えます。 照明の仕方によっては、胞子嚢の表面を透かして(?)胞子が並んでいるように見えます(右図)。

branching overview

胞子嚢の直径は 0.1mm 弱(70-80um位のものが多い感じ)と、かなり大きいです。 左のように枝分かれしていることもあります。


さて、このカビですが、接合菌というちょっと変わったグループに属しています。 最大の特徴は、その名の通り、2つの菌糸が「接合」をして胞子を作ることです。 これの写真がよく教科書などにあるのですが、残念ながら見ていません。 今回あげた胞子嚢や胞子は、無性的にできたものだと思います。

このグループの分類の一例を次に示します(生物学辞典4版より)。

接合菌門 Zygomycota 接合菌類 Zygomycetes ケカビ目 Mucorales
トリモチカビ目 Zoopagales
ハエカビ目 Entomophthorales
   …
ほか全部で 7目
トリコミケス類 Trichomycetes 全部で4目
(節足動物の腸管に付着して生活)

本などの写真を見ると、ケカビ目 (Mucorales) に属する ケカビ属 (Mucor ) とか、クモノスカビ属 (Rhizopus ) などによく似てますが、真相は不明。 → 2003/04/13 補足

これは、例のスライドグラスに砂糖入りの寒天を流し、そこに生えてきたものですが、イチゴが傷むとそれこそクモの巣みたいなのが生えてきますよね。あれがクモノスカビらしいです。あと、「インドネシアの納豆」こと「テンペ」、あれも同じ属の Rhizopus oligosporus などで作るということです(徳増征ニ 接合菌類. In: キノコの世界5 131-132. 朝日新聞社 植物の世界別冊 1997)。

テンペって何だよ、という方も多いと思いますので(エラソーな私も実は食べたことない)、いくつかリンクしておきます。思ったより情報がない感じですね…。


2003/04/13 補足

Rhizopus ?

その後、学生時代にケカビ類をやっていたという珪素鳥さんから Mucor(ケカビ) と Rhizopus(クモノスカビ)の違いについて、メールをいただきました。要点を以下に示します。

このページの写真については、分枝があまり見られない、柄が胞子嚢へ続くところでくびれていない、胞子の感じ(でこぼこしている)などから、(胞子嚢柄が長すぎる気もするが)ほとんどが Rhizopus だと思われるとのことです。

ただ、これらの写真が同一の種類かどうかも不明です。なにしろ、そのへんに放置して出てきたものを眺めているだけですから…。特に分枝している写真は別物(Mucor) の可能性もあるだろう、とのお話でした。

こういうことは本を見てもなかなか分からないので、本当に助かりました。珪素鳥さんのご親切に感謝します。

分生子

それから、「分生子」についてもご教示いただきました。これは「外生の無性分散体」を指す言葉で、基本的には、胞子嚢の中ではなく菌糸の先端などから外部に分離されるもの(外生胞子)を言うようです。

しかし、胞子嚢 (sporangia)の中に1つしか胞子ができず、それが脱落して散布される場合にも、「分生子 (conidia)」の用語を使うことがあるそうです。

... Some Mucorales produce small sporangia, with or without columellae, which contain but a few spores each, and in some species are monosporous. We designate such small sporangia as sporangiola (sing. sporangiolum; sporangium + L. dimin. suffix -olum) or sporangioles.
Sporangiola which contain but one spore are often regarded as conidia, and are so termed in the literature. This term applies particulary to structures in which the sporal and sporangial walls are completely fused and cannot be distinguished from each other.
Alexopoulos, C. J. 1962. Introductory Mycology 2nd ed. pp. 188-189.

なお、担子菌類(多くのキノコ)も外生胞子をつけますが、これは減数分裂でできるので、分生子とは言いません。


撮影: 2002/12/18, 19, 24 公開: 2003/03/29