金色に光る胞子(分生子)
スライドグラスに生やしたカビ。砂糖入りの寒天を流して花粉をまいて花粉管を観察したあと、これにカビが生えたら観察しやすいだろう、と放置したら予想通りいろいろ生えてきました。確かに見やすいです。
このほかにもいくつかのカビが出ましたが、今回は右の「黒いカビ」。
上の写真ではちょっと特殊な照明(暗視野照明)で胞子が光っています。 胞子が真っ黒でなくちょっと茶色っぽいので、こんな具合になったようです。 普通の顕微鏡写真(明視野照明)だと下のようになります。
カビの種類なんか簡単に分からないだろう、と、しばらく放っておいたのですが、別の件で「日本の水道生物」を見ていると、ズバリの写真を発見。種名までは分かりませんが…。
Cladosporium属 クラドスポリウム(クロカビ)
自然界に広く分布し、空中に浮遊するカビの中で最も多い。タイルの目地などを黒変させ、喘息のアレルゲンとしても問題にされている、という説明があります。(p. 189)
なお、以前にとりあげた別のカビ Alternaria もこの本に出ています。
ただ、単に「クロカビ」というと、餅などにつく Aspergillus niger をさすことが多いようです。
それから、手元に古い Introductory Mycology (2nd Ed.) があったので見たところ、Cladosporium でなくて Hormodendrum を使うことも多いとか。以下、ちょっとだけ引用。
In the Amerosporae, the form-genus Hormodendrum, has very much branched, tree-like conidiophores bearing small, spherical, or oval conidia in chains. (p. 415)
術語のアラシですが、Amerosporae というのは、胞子に隔壁がないグループのことだと思われます。 conidia が「分生子」=減数分裂でなく無性的にできる胞子、conidiophore が「分生子枝」=分生子がつく枝。
枝分かれして木のようになってる、という記述には納得。左は、コロニーを少し横から見たところ。水平にのびた菌糸のところどころから「木」が立ち上がってるのがわかります。
これも有性生殖が不明の「不完全菌類」だということだそうです。
Webをさがしたら、なかなか良いカビのページがあったので以下にメモ。Cladosporium の写真もあります。やっぱり、「極めて普遍的」とのこと。