ひとつひとつが群体。もっと大きなものもありましたが、この写真の横幅が1cm程度。
休耕田の脇の溝で、気になる藻類を発見(右はK氏。Thanks!)。普通よく見る藻は、糸状のものが多いが、これは一見アオサ、ではないけど幅があって平たくみえる。
多分緑藻だし、淡水ものなら、まぁ調べれば見当位はつくだろう…という訳で、少し持ち帰ってきました。クローズアップにすると、なかなか美しいものです(トップの写真です)。
それに、現場では帯状にひらひらしてる印象があったのですが、 こうして写真を撮ってみると、平たいというよりも、袋のようになっている感じがします。 つまり、この藻は、細胞のシートによってできている袋ということのようです。
さて、次はとりあえず顕微鏡で、そのシートがどうなってるか見てみよう… と、やってみたらびっくり。なんですか、これは!(下図)。
左側の写真は、藻の体の端の部分を低倍率で見たものです。右側の写真は、まるで池の水の中のプランクトンを見ているようですが、藻の体の一部を拡大したものです。丸いのひとつひとつが細胞。直径10um程度。
ということは、どうもこの藻の体を作っている「シート」は、細胞同士が直接つながっているのではなく、透明な材料の中に細胞が浮いている、というようになっているらしい。しかも、2個または4個ずつになっている細胞が結構ある。うーむ…面白い。
普通の多細胞の植物では、細胞どうしがタイルを敷いたようにぴったり並んでいるか、少なくとも細胞の一部は他の細胞と接しているのが普通です。
ただ、細胞が細胞間物質に浮かんでいる、という形の組織は、動物ではよくあります。例えば軟骨などは、コラーゲンの間に細胞が点々とある訳です。ですから、「生物の体は細胞からできている」というけど、細胞間物質もとても大事、と強調されることもあります。もっとも、細胞間物質は、細胞が作る訳でしょうが…
こういう条件のものを探すと、ありました。緑藻綱・ヨツメモ目。
「細胞の内部構造はクラミドモナスに似るが,多くは不動性。 ゼラチン様基質のなかで集合体をつくる」(出典:原生生物情報サーバ) http://protist.i.hosei.ac.jp/taxonomy/Chlorophyta/Chlorophyceae/Tetrasporales.html
どの細胞も同じ形ですので、この藻は「群体」である、 ということになるようです。ふーむ、なるほど。
ヨツメモ目の中では、今のところ、ヨツメモ:Tetraspora sp. ということでいいと思っていますが、さて…。
参考:淡水プランクトンのページ(どろおいみじんこ氏) http://cyclot.hp.infoseek.co.jp/ryokuso1/tetsp.html