耳石

Home
Last update: 2002/09/17
sagitta

イシモチ(左)とアジ(右)の耳石

耳垢が固まって石のようになったのが…ってこれはウソ

耳は「音を感じる感覚器」ですが、「平衡感覚」とも深い関係があることはご存知でしょう。 この「平衡感覚」には「傾き」と「回転」があって、それぞれ、内耳の「前庭(ぜんてい)」と「半規管」が関係する、というようなことを高校生物でも教えています。 で、この「前庭」の中に「平衡石」と言われるものがあり、体の傾きによってこれが移動すると、下にある感覚細胞を刺激して、その情報を脳に伝えるのだ、などと説明するわけです。

このへん、絵がないとイメージしにくいし、こういう説明してるとなんだか授業みたいでナニなので、わかりやすい次のページの図などを見てくださいね。
http://www43.tok2.com/home/motch29/sickness/dizziness2.html (Mental Vitamine For Hearty Hearts より)

さて、その平衡石、上のリンクのように、ヒトでは小さい砂状のものがバラバラとゼラチン質に入っているらしいのですが、魚類では確かに「石」と言ってもいいものがあり、簡単に取り出して観察することができます。


この耳石は、木の年輪のように成長過程を記録しているとかで、水産関係でよく利用されているようですし、教材として使う、という試みもされています。今回、「やってみたい」という生徒さんがいたので自分でもやってみたら、これがなかなか面白い。

一番気に入っているのが、晩御飯とか宴会とかでビール飲みながらやれるところです(飲み過ぎると不可)。要するに尾頭付きの頭の部分についている肉を取りはずし、頭骨を壊して、目の少し後方あたりを探すわけです。ただ、小さいので慣れないと難しいかも。

つぎのような真面目なページがあるので、詳しい方法などはどうぞそちらをご覧下さい。
http://village.infoweb.ne.jp/~yasuhisa/omnis5.html (omnisサークル 森田保久の高校生物関係の部屋 より)


ここでは、とりあえず身の回りの魚、数種類から耳石を取り出してみましたので、そのご披露をば。

Psenopsis anomala Lepomis macrochirus
Cololabis saira Trachrus japonicus

左上イボダイ、右上ブルーギル、左下サンマ、右下アジです。取り出した石を、水に入れて撮影(落射照明)。なかなかキレイなもんですね。

実際の大きさは画像の大きさと比例していません。また、トップの写真のイシモチ(生徒さんが取り出したもの)の耳石はころっとした感じですが、これらは皆、ほぼ扁平です。

長軸方向に溝がある面とない面があるのと、一箇所欠けているような部分があるので、左右と表裏があるのは分かります。ですが、どちらが表か裏か、前か後ろか、そのへん良く分かってません。なんとなく探っているうちに「あった!」という感じで見つけて喜んでいる、というのが実態なので、今後の宿題ということでご勘弁。

それから、問題の「縞模様」ですが、普通に見てもそれほどハッキリ分かりません。が、透過光で見ると、下の写真のサンマのように結構見えるものもあります。

Cololabis saira

なお、「イボダイ」の名前でマナガツオ科のバターフィッシュを売ってることもあるそうですが、これは多分本物。大西洋からの冷凍輸入物で腹鰭がないので分かるそうです(木村義志, 2000, フィールドベスト図鑑日本の海水魚, 学研)。


やってみた感想を少々。イボダイは初めてでもわかりやすかったです。煮付けの残りから取りました。ブルーギルは某君が釣ってきて飼おうとしていたのが死んだので、これを煮て処理しました。サンマは焼き魚で食べたものですが、長径2mm程度とかなり小さくて、食べながらではダメ。水を入れた容器のなかに頭をいれて良くほぐし、ゴミを徐々に捨てつつ虫眼鏡で探してようやく発見。アジも焼き魚の残りでやりましたが、結構難しく、やはり煮魚の方がやりやすいような感じがしてます。

以下、Web や本を調べて分かったことのメモを書いておきます。

内耳そのものや他の石も実際に見てみたいと思っていますが、今のところビール飲みながらのせいか、発見できていません。つぎのページにニジマスから取り出した内耳と、3つの石の写真があります。ほかに、耳石の成分のこととか、形成過程など、興味深い記事が読めます。
http://omrc.ori.u-tokyo.ac.jp/yTakagiHP/takagi12.html都木靖彰ホームページの研究紹介ページより)

「縞模様」については、とても沢山の文献があるようですが、次のものがとりあえず目につきました。 西村・渡辺・山田, 1985, サンマ耳石の日周輪様微細輪紋構造, 東北区水産研究所研究報告, (47)33-35.
http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/JASI/31-2546.pdf
きちんと見るには樹脂に埋めて切って磨いて、というようにする必要があるみたいですが…。この細かい縞は一日一本らしいです。

それから、上の文献によると、溝がある面が体軸側(神経の通る溝)、とがっているのが前、ということのようですね。


撮影: 2002/09/03, 04, 10, 11, 17 公開: 2002/09/17