タニシの精子は2通り

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Last update: 2002/03/29
sperms of Cipangopaludina

手塚治虫もこれを見たらしい


精子といったら「オタマジャクシ」!
まぁこれが一般的ジョーシキ的イメージですが、実際はいろいろ。しかも、同一種・同一個体が複数タイプの精子を持つことがあります。

論より証拠、上の写真をごらんください。これはタニシの精子ですが、2タイプが見えます。それぞれ取り出したのが下の写真。

typical sperm atypical sperm
正型精子 異型精子

左が正型、これは卵と受精する方で、異型の方は受精能力を欠くそうです。数は異型の方が多かったような感じがします。 多分、両方とも右が頭です。実を言うと、異型精子はどちらが頭か、観察に自信がないのですが、フサフサがしっぽにあたるようです。

なお、これを持っていた貝は、一応「タニシ」として教材屋が売っていたものですが、正確な種名は不明です(マズイなー ^^;)。それから、生物学辞典などは、異型でなくて異という字を使っています。


この写真を撮ったのはずいぶん前なのですが、これに関する紹介記事が最近出ました。以下は次の文献からの引用です。結構いろんな例があるようです。

早川洋一、中嶋康裕 2000. 精子の多型現象と兵隊精子説. 遺伝 54(6):25-30

それにしても、これを知った時はとても驚きました。精子が2通り?何でまたそんな!

上記記事にも当然「異型精子の機能」として話が出ているのですが、はっきりしたところはまだ不明のところが多いようです。が、ひとつは「ヘルパー精子」もうひとつは「兵隊精子」ということがいわれているようです。

「ヘルパー」の方は正型精子を助ける(活性化したり、栄養面で助けたり、卵まで運搬を手伝ったり)という働き、一方「兵隊」の方は他のオスの精子の邪魔をする働きが想定されています。

どうも「ヘルパー」に比べて「兵隊」の方は存在も疑問視されているようですが、なかなか面白い話ではあると思います。Baker という人は一般向けに「精子戦争」という本まで書いてるそうです(河出書房新社 1997)。ただしこれは専門家の間ではごく評判が悪いとかですが。


手塚治虫もこれを見たらしい

さて、今回この件がWebにあるかなと調べていて、意外な事実を知りました。なんとあの手塚治虫の博士論文が「異型精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的研究」(奈良県立医科大学 1961)なんだそうです。

たとえば、手塚治虫の部屋>手塚治虫記念館の紹介 で見られます。
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic/5479/tezukakinenkan7.htm

ふーん、そうなのかぁ、と、なんだかとても驚きました。私も鉄腕アトムで育った世代なんで、彼が本格的昆虫少年で医学博士なのは知ってましたけども。ファンには有名な話なんだろうか?


撮影(vp): 1997/01/18 公開: 2000/11/11