イスノキの虫こぶ

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Last update: 1999/08/27


two galls

グラウンドの隅のイスノキの虫こぶ。左の大きいもの、右の葉についてるものの2種類が見える。


isu-no-naga-tamafushi isu-no-ha-tamafushi

左が「イスノナガタマフシ」右が「イスノハタマフシ」(葉を横から見てます)。いずれもアブラムシによる虫こぶで、東京付近でもこのほかに「イスノコタマフシ」というのも良く見られ、全部で10種類くらいはあるそうです。いすれもアブラムシによるものだそうです(「イスノナガタマフシ」はイスノフシアブラムシ(Nipponaphis distiliicola)、「イスノハタマフシ」はヤノイスアブラムシ(Neothoracaphis yanonis))。

虫こぶの名前についてはあまり自信なし。また、1999/08/04のコメントも参照のこと。

左の大きなやつは、笛にして鳴らすことができます。その音からイスノキを俗称「ヒョンノキ」というとか。この穴は、11月ごろ、ここからアブラムシが出てきた穴とのこと。その後もかなり長く木についたままになっている模様。あまり数は多くありませんでした。しかし、この形、どうやってできるんだ?

右のやつはまだ若いもののようです(大きさはこの程度でおしまいだけど、これから虫が出てくる)。

虫こぶというのは、虫(昆虫だけではなく、ダニその他もあり)が植物に何か刺激を与えて(例えば汁を吸うとか)、植物がそれに反応してできるのですが、詳しいことは不明な点が多いようです。虫ごとにいろいろな形になるらしいですが、違う虫でも同じような虫こぶの場合もあるようです。

いやー、しかし、虫関係の名前はなんというか、慣れないとつらいなあ。ついついタマ「む」シって書いちゃったり。


イスノキ(Distylium racemosum)ついても一言。これはマンサク科(Hamamelidaceae)なんですね。マンサク科っていうとあまりなじみがないけど、ヒュウガミズキなんかが仲間です。でもこれは常緑で、葉の感じはモチノキなんかに似てます。もともと関東以北には自生してないようです。東京では、あまりあちこちに植えられてるって感じではない気がします。

uso plate

(おまけ)

←この木についてたウソ名札。人の言うことは、あんまり鵜呑みにしちゃあいけませんよ!っていう例。(このサイトのも含めて)どんな情報でも、自分なりに吟味しないとね。


この項目は、薄葉重著、「自然史双書6 虫こぶ入門」(八坂書房 1995)が大変参考になりました。詳しくは同書 p.64, pp.149-156などを参照してください。アブラムシの生活史との関係なんかもおもしろいものがあるようです。イスノキと他の木(コナラとかアラカシとか)と行ったり来たりしてるという話とか。

植物と動物の相互関係というのは、なんかいろいろありそうで、興味深いものがあります。そういえば、フシダニの話なんかもあったな。


1999/08/04 虫こぶの名前の件

niftyserve ffieldでご活躍のキタさんのところにもイスノキの虫こぶの記事(1999/09/02削除)が出たのでのぞいてみると、むむむ、虫こぶの名前が違う(薄葉リストにない!)。これは?と伺ってみると、

「日本原色虫えい図鑑」湯川・桝田 全国農村教育協会 1996

を参考にされているとのこと。早速チェックすると、この本で新しい名前や、今までの名前の改称がかなりなされていました(考えてみればフシダニの件で一回見たことある本でした。実にオマヌケ)。

上の2つの虫こぶ、「イス(ノ)ナガタマフシ」は「イスノキエダナガタマフシ」、「イス(ノ)ハタマフシ」は「イスノキハタマフシ」になっています。植物名−部分−形状、という感じで名前をつけることにしたようです。古い名は異名となっています(それも「ノ」をつけない形)。

しかし、虫こぶの名前というのも考えてみると妙なものですね。植物とムシと両方いないとできない訳だし、さりとて名前なしでは不便だし(ムシが不明のものもある?)。だから標準和名を決めてるんでしょうが、学名はつけられないでしょうね。植物とムシと両方示して論文を書くのかな?このへん、「分類する」ということの本質的な部分が…、ってな感じがして結構気になります。もう少し調べてみるつもりが、これも放置中。


撮影: (d) 1999/03/03